「低圧トップランナーモーター」のJIS規格策定――2015年春の省エネ基準後押し:FAニュース
経済産業省は新たに「低圧トップランナーモーター」のJIS規格を制定し、省エネ法のトップランナー制度の対象機器となった三相誘導電動機(産業用モーター)において、トップランナー基準を満たした製品を普及しやすいように後押しする。
経済産業省は2014年3月20日、日本工業規格(JIS規格)の制定と改正を発表した。その中で、これまでの産業用モーターに関するJIS規格とは別に、2015年4月から規制が開始される「トップランナー基準」を満たした「低圧トップランナーモーター」のJIS規格「JIS C 4213」を新たに策定した。
産業用モーターは、ポンプや圧縮機、送風機などの産業用機器に利用されている。国内では毎年約1千万台が出荷され、1億台以上の台数が普及しているといわれている。日本では従来、インバータ技術と組み合わせたモーターシステム全体としての省エネルギーを推進してきたため、高効率モーターそのものの普及は進んでいない状況だった。一方、欧米を中心とした海外では、高効率モーターの適用義務化が進んでおり、実際に世界の電力需要用途の多くをモーターが消費しているという状況だ。よって日本でもモーターの高効率化がより強く求められる状況になってきた。
そこで、2013年11月に「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」により、産業用モーターがトップランナー制度の対象機器に追加。これにより、産業用モーターにおいても省エネ基準(エネルギー消費効率に関する目標基準値)が設定されることになった。2015年4月以降、モーターの製造事業者が出荷するモーターや輸入されるモーターは省エネ基準の達成を加重平均で義務付けられることになり、この基準が満たされない場合は販売できなくなる(関連記事:2015年春の規制開始に向け各社がトップランナー基準適合モーターをアピール)。
「IE3(プレミアム効率)」以上が要求
産業用モーターの効率レベルは、国際規格であるIEC(International Electrotechnical Commission)に規定されており、「IE1(標準効率)」「IE2(高効率)」「IE3(プレミアム効率)」「IE4(スーパープレミアム効率)」などのクラスに分類されている。新たに制定された目標値は、このIE3以上の達成が求められている。
これまで日本市場がモーター全体での省エネ化を図ってきたことから、JISでも「JIS C4210」(一般用低圧三相かご形誘導電動機:IE1(標準効率)相当)、「JIS C4212」(高効率低圧三相かご形誘導電動機:IE2(高効率)相当)までの制定しかなかった。そのため、今回初めてトップランナー基準を満たす「IE3」以上の規格が制定されたことになる。
日本電機工業会(JEMA)では、この新たなJIS規格をクリアした産業用モーターの普及促進のためにロゴマークを用意し、モーター本体などに表示することを推奨しているという。
今回の低圧トップランナーモーター規格は、おおむね省エネ法およびIE3基準がベースとなっているが、いくつか例外もあるので以下に紹介しておく。
- 規格の適用範囲は、省エネ法の規定に準じたものだが、定格電圧については省エネ法が1000V以下としているのに対し、600V以下としている。
- 効率基準値は、基本的にはIE3と一致させているが、日本では50Hz/60Hz共用タイプで3定格または6定格を持たせるモーターが流通しており、省エネ法およびJIS規格でもIE3とは異なる基準を採用している。
- 寸法について、JIS C4210およびJIS C4212では、生産、使用の効率化などの観点からモーターの枠番号(サイズ)と出力の関係を規定していたが、本規格では規定していない(参考情報としては記載)。
- 試験方法は、JIS C 4210およびIEC 60034-1(回転電気機械−第1部:定格及び特性)に規定されている試験項目に合わせて規定。過速度試験、騒音試験などのようにJIS C 4210だけでは試験方法が明確でないものは、業界標準規格の内容を一部取り入れた。
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