大解剖! スターターモーターの仕組み:いまさら聞けない 電装部品入門(5)(1/3 ページ)
自動車のエンジンが動作する状態まで回転数を高めるのに必要な電装部品がスターターモーターである。今回は、スターターモーターの基本的な動作の仕組みについて詳しく解説しよう。
エンジンは一定以上の回転数に達することで内燃機関としての各部機能が働きます。エンジンをこの状態までもってこられれば、エンジンを始動できたことになります。エンジン始動時は、外力によってクランクシャフトを始動可能な回転数まで駆動して、エンジンの内部で「吸入/圧縮/燃焼/排気」の各工程を成立させなければなりません。そして、クランクシャフトを駆動する外力の出力源となるのが、今回取り上げるスターターモーター(以下スターター)です。
小型・軽量でありながら大トルクを発生
スターターは、エンジンの圧縮圧力や摩擦力に負けることなく、クランクシャフトを始動可能な回転数まで駆動する必要があります。このため、極めて大きなトルクを発生させられるような性能が求められます。加えて、エンジンルームという限られたスペースに収まるような小型化とともに、車両の走行性能に悪影響を与えないように軽量であることも求められます。
一般的なスターターは、その先端にあるピニオンが、クランクシャフトに直接組み付けられているリングギヤ(フライホイール外周)にかみ込むことによって、その駆動力を伝えます。
スターターには、モーターの回転数のまま動力として伝えるピニオン摺動式、アイドルギヤ(減速ギヤ)を介してモーターの回転数を落としてトルクを増大させてから動力として伝えるリダクション式、アイドルギヤではなくプラネタリギヤを用いて減速を行うプラネタリ式があります。
小型化と軽量化が容易であるという利点から、リダクション式もしくはプラネタリ式のスターターが現在の主流となっています。
スターターの特徴と出力特性
スターターには直流直巻型モーターが用いられており、フィールドコイルとアーマチュアコイルが直列に結線されています。スターターに直流直巻型モーターが採用されている理由は、以下のエンジンと直流直巻型モーターの特性を比べてみれば分かりやすいのではないでしょうか。
- エンジンは、始動時に回転抵抗が最大だが、回転を始めると急激に回転抵抗が減少する
- 直流直巻型モーターは、始動時に最も大きなトルクが発生し、回転数の上昇に伴いトルクが減少する
つまり、双方の特徴を補完しあう関係となるため、自動車のスターターには直流直巻型モーターが採用されているのです。
エンジン始動時の回転抵抗は極めて大きいため、一般的なスターターには約100Aもの電流が流れます。これはすなわち、鉛バッテリーからの持ち出し電流であり、一般的な小型の鉛バッテリーにとっては非常に大きな電流を出力することになります。このため、長時間のスターター駆動に耐えることができません。
新品の時と比べて鉛バッテリーの性能が劣化していると、スターターの回転力が弱くなる事実はご存じでしょう。特に、鉛バッテリーの化学反応が抑えられる冬季においては、出力できる電流が小さくなってスターターのトルクが不足し、最悪の場合はエンジン始動に至らずに鉛バッテリーが上がってしまう事象へと発展します。
スターターは、鉛バッテリーが必要十分な性能を有していることを前提に、正常な動作が行える電装品です。スターターの性能を測定/点検する際には、鉛バッテリーの容量や性能に十分注意する必要があります。
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