「日本企業は本当に新興国市場に合った製品を作れているか」――タタコンサル:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
海外展開に早期から取り組んできた日本の製造業にとって「グローバル化」は長年取り組んできた課題である。しかし「今求められているグローバル化は過去のものとは異なる」と、タタコンサルタンシーサービシズでエンジニアリング&インダストリアルサービス事業部門副社長兼グローバルヘッドを務めるレグー・アヤスワミー氏は指摘する。
バリューとマネーのバランスを取る
MONOist 新興国への展開として、低価格化への対応だけでなく、新たな機能を加えるようなことも可能ですか。
アヤスワミー氏 最も重要なのは地域属性に基づく要件をどう満たすかということだ。その状況次第によっては機能を減らす、もしくは機能を増やすということもあり得る。
例えば、私が住んでいるインドの町では、気温が25度を下回ることはない。そのため自動車のヒーターは全く必要がなく、使ったことがない。それなのに、そういうものに対して対価を払わなければならないという状況が問題だ。現地のニーズに即した形で設計することで多くのコスト削減が可能になる。
一方で、インドの輸送用トラックでは、道路が舗装されていないために、先進国市場のものよりもシャーシを頑丈なものにしなければならない。この場合では、機能を追加するということになるだろう。
MONOist 新興国の製品展開におけるTCSのコンサルテーションプロセスはどのようなものなのでしょうか。
アヤスワミー氏 まずはマーケットの声を聞くことが全ての始まりだ。TCSがインタビューなどを通じて行うケースもあれば、第三者機関を利用して調査するケースもある。次に製品の機能の分析と定義を行う。そして地域の規制や競合製品との比較などをブレインストーミングし、これらの結果を踏まえて初期設計を行う。
その後、サプライチェーンの製造コストや製造方法などを踏まえながら詳細設計を行っていくという流れだ。設計段階だけでなく、生産段階までカバーし、サプライチェーンやアウトソーシングなども含めてコンサルテーションできるところがTCSの特徴だ。
MONOist その他でグローバル展開における先進的な事例があれば紹介してください。
アヤスワミー氏 グローバル重工業大手企業の船上デッキに設置する発電機の事例がある。船用の発電機は船の仕様やスペースの問題に左右され、ほとんどカスタムによる設計やエンジニアリングが必要になっていた。これらに対し、各分野のエキスパートチームを結成し、一部の部品を共通化するモジュール設計を実現した。全てがマニュアルだったデザインのオートメーション化を行ったということだ。これらの結果、エンジニアリングプロセスを4週間から1週間に短縮することに成功した。
その他、日系自動車メーカーがインドで工場建設を行う際に、現地調達部品の比率を向上し最終製品のコスト低減を支援したり、発電用ターボ装置メーカーが設計サイクルおよび設計コストを半減させる計画の支援を行った事例などがある。各市場のニーズが多様化しオペレーションが複雑化する中、自社内だけでこれらを全て把握し、それに伴う体制を構築するのは難しい。ますますグローバル化が求められる中、これらの支援を行っていくのがわれわれの役割だ。
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