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優勝校の京大も取材! 若者の熱気があふれるピットエリア車を愛すコンサルタントの学生フォーミュラレポ2013(3)(3/3 ページ)

学生フォーミュラレポート、最終回である今回は、80校を超える参加校のテントが並び、若者の熱気があふれるピットエリアでのインタビューをお伝えする。

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京都工芸繊維大学

 京都工芸繊維大学「Grandelfino」チームリーダーの井上寛之(以下I)さんにお聞きしました。Grandelfinoは、前回の第10回大会の優勝校です。

S ディフェンディングチャンピオンとして、今年の活動を振り返ってどうでしたか?

I 昨年の総合優勝はドライバーのスキルの要素がかなり大きかったのです。そのドライバーが卒業した今年、マシンそのもののドライバビリティをどう向上させるか、ずいぶん議論とシェイクダウンを重ね、結果として昨年よりも性能の高いマシンができたと思っています。ただ、今大会ではセッティングなどの問題で自分たちの思っていたタイムを出せず悔しい思いです。

S まぁ、ずっと上位をキープすることはそうやさしいことではないよ。成功して、さらに性能向上を目指して失敗して、またそれを克服して……。その繰り返しだよ、オヤジの説教みたいになっちゃうけど、これからの君たちの人生と一緒だよ。メンバーは増えた?

I 一昨年くらいから急激に増えて、今は40人体制です。マンパワーを生かして静的審査にも力を入れられるようになりました。

S 反面、メンバーが多くなると大変なこともあるでしょ?

I はい、メンバーが少ない時は一人当たりの仕事量が多いので、黙っていてもモチベーションキープができたのですが、今はメンバーとしてどう引き留めておくかという事も考えなくてはいけません。

S 「活動に来ても仕事がない」じゃつらいものね。仕事の差配で苦労するのは企業の管理職も一緒、その面からも学生フォーミュラの活動はすごくいい経験になると思う。就職活動にもいい影響があるんじゃない?

I はい、今年の就職組は自動車メーカーに就職した人が多いです。「学生フォーミュラやっていた」と言うと人事担当の方が食い付くそうです。

S 昨年のマシンから大きく変わった部分は?

I ホイールの変更です。パワートレインが10PSほど強力になったのでPCDと幅を変えました。ただ、それに伴ってハブを変更したのですが、強度と重量のバランスを取ったつもりが、何度か破断してしまい苦労しました。ドライバーのスキルは2人とも向上したので、その点は良かったです。

*PCD:ホイールをハブに取り付けるための穴の中心を結んだ円の直径。

S 2人ともスムースドライビングだったものね。しかもラップタイムは6秒台でそろえてくるし! この静岡での5日間、体力的にも精神的にも大変でしょう?

I はい、競技が終わってからミーティング、寝るのが午前2時過ぎで、5時には起床。睡眠時間が取れなくて……。

S どんな所に泊まっているの?

I キャンプ場のコテージで雑魚寝ですね……。

S お金、使えないものねぇ……。つらいよね……。でも来年もまた来ちゃう。

I はい、学生フォーミュラが大好きですから!


京都工芸繊維大学”Grandelfino”プロジェクトリーダー 井上寛之さん

京都大学

 京都大学「KART」チームリーダーの大橋一輝(以下O)さんにお聞きしました。

S いやぁ、美しい走りでしたね! コーナリングが実にスムースで、見ていて安心感がありました。

O ありがとうございます。とにかく完走できてほっとしています。

S 一緒に走っていた上智大学とは対称的なとてもシンプルなマシンだけど、このコースならエアロなしの方がいいのかなあ?

O われわれもそう考えていて、軽量マシンで小さなタイヤを使い切るというコンセプトなのですが、上智さんにラップタイムで3秒差を付けられましたから、そうは言いきれないと思っています。

S エンジンは「WR450」ですね。おっ! フレームがアルミ丸パイプだ! しかもこの溶接のクオリティはすごい! 私、アルミ大好きなんですよぉ!


アルミ好きの筆者の目をくぎ付けにしたアルミ丸パイプスペースフレーム

O これはうちの特徴ですね。

S 溶接は自分たちでやるの?

O そうです。先輩たちからの技能伝承で、自動車メーカーの方々にもびっくりされます。

S カウルが付いている時には「コンパクトなマシン」という印象だけでしたが、カウルが外れたネイキッド状態のこの美しさにはあ然としました。フレーム以外の特徴を教えてください。

O 私たちはドライバーの操作に自然に反応するマシン作りを狙っています。例えばステアリング周りにはこだわっていてほとんどフリクションロスがありません。

S (どれどれとステアリングを回してみる筆者)本当だ! 何だこのスムースさは! こういうハンドリングを国産車は造り込まなきゃいけないんだよ!(と相変わらず一言多い筆者)

O ドライバーの竹田さんがサスペンションセッティングをしていて、もう4年目になります。

S サスセッティングできるドライバーって最高だよね。エアロパーツなし、小径タイヤを使い切るコンセプトは完全なコーナリングマシン狙いだね。

O そうですね、スキッドパッドでも上智さんに次いで2位でした。エアロの差なのかなとも思いますが。

S 来年もエアロに頼らずに行くのかな?

O そうですねぇ……、われわれ京都大学ですからみんなが右を向くと左を向きたがる……。

S 京都人気質だね!(爆笑)結果はもうすぐ出るのかな? 優勝の可能性は?

O 90%優勝だと思っていますが、ドキドキです。

S 私はもうすぐ会場を後にするけど、あとで順位を確認したら大きな声で「おめでとう!」って言うから心の中で受け取ってね。

O ありがとうございます!

 京大は、「90%」という予想の通り、第11回大会の総合優勝校を勝ち取りました。おめでとうございます!


京都大学フォーミュラプロジェクト プロジェクトリーダー大橋一輝さん


 3回にわたる連載では、会場でマシンの走りや学生たちを見て、聞いて、感じたままを文章にしてきました。

 大会の詳細なレビューは公式ページからダウンロードできます。何と、113ページ! 読みごたえありです。

 学生フォーミュラの取材は今年で3年目でしたが、毎回感じるのは「車好きの学生がたくさんいる」という事実と、「学業との両立はかなり困難で苦しいことばかりだけど、自分たちの作り上げたマシンが激走するのを見ればその苦しさを忘れてまた来年来たくなる!」という学生たちの熱き思いです。来年はどんな大会になるのか、今から楽しみです!

筆者紹介

関伸一(せき・しんいち) 関ものづくり研究所 代表

 専門である機械工学および統計学を基盤として、品質向上を切り口に現場の改善を中心とした業務に携わる。ローランド ディー. ジー. では、改善業務の集大成として考案した「デジタル屋台生産システム」で、大型インクジェットプリンタなど大規模アセンブリの完全一人完結セル生産を実現し、品質/生産性/作業者のモチベーション向上など大きな効果を生んだ。ISO9001/14001マネジメントシステムにも精通し、経営に寄与するマネジメントシステムの構築に精力的に取り組み、その延長線上として労働安全衛生を含むリスクマネジメントシステムの構築も成し遂げている。

 現在、関ものづくり研究所 代表として現場改善のコンサルティングに従事する傍ら、各地の中小企業向けセミナー講師としても活躍。静岡大学工学部客員教授として教鞭をにぎる。



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