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射出成型にもグリーン化の波!? ――物理発泡関連技術のトレクセルが日本法人設立FAニュース

物理発泡型のプラスチック射出成型技術「Mucellプロセス」を展開する米国トレクセルが、日本法人を設立した。欧州の化学物質規制などで需要が拡大している物理発泡型技術の波を国内でも起こす狙いだ。

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トレクセル

 超臨界流体を用いた射出成形技術「MuCellプロセス」を手掛ける米国トレクセルは2013年11月12日、プラスチック成形関連機器を提供する松井製作所との合弁により日本法人「トレクセルジャパン」を設立したことを発表した。トレクセルは、超臨界流体(SCF:Supercritical Fuild)を活用した物理発泡によるプラスチック射出成型技術の日本における事業展開を本格化させる。



超臨界流体を活用するMuCellプロセス

 トレクセルが展開するMuCellプロセスは、1980年ごろにマサチューセッツ工科大学(MIT)のNum Suh氏と学生によって考案されたもの。窒素や二酸化炭素などの不活性ガスを、臨界点以上の温度や圧力下に置いて気体や液体の区別がつかない「超臨界流体」状態にし、溶融ポリマーに均質に拡散・溶融させ、注入時の圧力により均質な微細セル構造を形成するプロセスだ。

 トレクセルは1995年にMITベンチャーグループによって設立。このMuCellプロセスのグローバルでの独占特許を所有しており、同技術を核とした技術サービスや関連製品の販売を行っている。ちなみに特許権利期間終了により関連技術の特許などは解放されているものも出てきているが、用途特許を取得しているため「約10年は独占状態は維持できるだろう」(同社)としている。

MuCell射出成型MuCellシステム MuCellプロセスによる射出成型の仕組み(左)とMuCellプロセスを用いる射出成型機のシステム。従来はライセンスと機器は別販売だったが、現在は機器の購入と共にライセンスも所有できるという(クリックで拡大)

化学物質規制への対応で需要増

津川氏
トレクセルジャパン代表取締役に就任する津川寿氏

 一般的には、プラスチック射出成型を行うためには、化学反応で発泡させるケースが多いが、欧州のREACH規制など化学物質の規制が強まる中、プラスチック中に化学物質が残る可能性がある化学発泡型は将来的には何らかの影響を受ける可能性がある。欧米ではこれらの動きから物理発泡型の射出成型技術の需要が高まっており、トレクセルもここ3年ほどで販売台数が急増しているという。これらの流れから今後日本での需要も高まると考え、今回のタイミングで日本法人を設立したという。

 日本法人のトレクセルジャパン代表取締役に就任した津川寿氏は「日本ではまだまだ化学発泡型が中心だが、規制などにより物理発泡型を求める動きが広がると見ている。既に日系製造業の欧州法人など、日系関連企業でも実績は伸びてきており、日本法人設立によりさらに受注を加速させたい」と話している。

 MuCellプロセスを用いた射出成型技術は、化学規制への対応に加えて、設計自由度向上や軽量化、部品コスト削減、開発期間の短縮などにも効果を発揮するという。

販売数量推移
MuCellシステムのグローバル販売数量推移(クリックで拡大)

 トレクセルジャパンでは、既に、日本製鋼所、東芝機械、日精樹脂、東洋機械金属、三菱重工などの国内射出成型機メーカーとパートナーシップを結んでおり、連携による販売拡大を推進する方針。さらに金型メーカーや樹脂流動解析ツールのベンダーなどとのパートナーシップも拡大していくという。

 津川氏は「トレクセル内の日本の販売比率はまだ4%程度。この比率を高めることに加えて、日系企業の世界各地の拠点への導入を進めていきたい」と抱負を語っている。

CarFood 主力の自動車向けのプラスチック成形(左)。自動車向けが全体の売上高の75%を占めるという。一方でフードパッケージなど、自動車以外の分野の拡大などにも取り組む(右)(クリックで拡大)

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