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新型「フィット ハイブリッド」は時速75kmまでモーターだけで走れちゃう!今井優杏のエコカー☆進化論(5)(2/3 ページ)

自動車ジャーナリストの今井優杏さんが、独自の切り口で最新のエコカーや搭載技術を紹介する本連載。今回は、新開発のハイブリッドシステム「i-DCD」の採用により国内最高燃費を達成した、ホンダの新型「フィット ハイブリッド」を取り上げる。

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販売台数の73%はハイブリッドモデル

 さて、新型フィットの販売台数の実に73%を占めるのが、ハイブリッドモデルのフィット ハイブリッドです。売れるだろうとは予想していましたけど、まさか7割を超えるとは、単純に驚きました。

 それほどまでに今「ハイブリッド」は車両開発の最重要軸であり、あの「レクサスIS」だって、ディーラーによってはハイブリッドモデルしか発注がない、なんてところもあるくらいですから、ハイブリッドをハズすわけにはいきません。

 ですから、かつてない好燃費を狙う新型フィットの中でもキモとなったのが新たなハイブリッド技術の開発でした。

 排気量1.5l(リットル)の直列4気筒アトキンソンサイクルエンジンに、高出力モーター内蔵の7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)、リチウムイオン電池パックを搭載した新型フィット ハイブリッドは、先代フィット ハイブリッドと同様、コンパクトさと構造の単純さからくる低コスト化を狙って、1モーター式のハイブリッドシステムを採用しています。

新型「フィット ハイブリッド」のハイブリッドシステム「i-DCD」の構成
新型「フィット ハイブリッド」のハイブリッドシステム「i-DCD」の構成(クリックで拡大) 出典:ホンダ

「ジェッタ ハイブリッド」との違い

 しかしメカニズムは大きく前進し、「インサイト」や先代フィット ハイブリッドに搭載されていた「IMA(インテグレーテッドモーターアシスト)」から、「SPORT HYBRID(スポーツハイブリッド) i-DCD(インテリジェント・デュアル・クラッチ・ドライブ)」へと、中身の変更に伴い名称も改められました。

 今回特に注目したいのは、あの小さなフィットのボンネットに、モーター走行を可能にしたハイブリッドシステムがぎゅっと入ってしまっているところです。

 例えば、同じような7速DCT搭載のハイブリッド車というくくりで見れば、フォルクスワーゲンの「ジェッタ ハイブリッド」が挙げられます(残念ながら日本未発売モデルになっちゃいました……)。とはいえ、「ジェッタ」はご存じの通り中型セダンという位置付け。広いボンネットの中にモーター走行を可能にするハイブリッドシステムが収納されています。

フォルクスワーゲンの「ジェッタ ハイブリッド」(クリックで拡大) 出典:フォルクスワーゲン グループ ジャパン

 その内訳を入力側(エンジン側)から見てみると、まずエンジンとモーターがあり、その間にクラッチを挟みます(これによりモーター走行が可能になります)。そのモーターの先にさらに変速のための2重になっているクラッチ(これがデュアルクラッチです)があり、そしてそのさらに先に7段階の変速を行うギヤボックスが並んでいる、という構造になっています。しかし、ジェッタ ハイブリッドの7速DCTは、同軸上の内側と外側に2本のギヤシャフトを配置する構造になっているため、7速分のギヤが同軸上に並ぶことになります。これだけでもかなりのスペースを取ってしまうのです。

フォルクスワーゲンの7速DCTの構造(クリックで拡大) 出典:フォルクスワーゲン グループ ジャパン

 そもそもフォルクスワーゲンがトレンドを作った7速DCTは、その名の通り2系統のクラッチを交互にスタンバイさせておくことで変速スピードを上げられ、同時に燃費向上にも貢献するというもの。

 つまり、1速、2速、3速とつなげるのではなく、1速、1.5速、2速、2.5速とつながっていくようなイメージですね。2本のギヤシャフトをクラッチで切り替えることにより変速を行うので、変速時間のロスをなくせます。ギクシャクした変速も防げますし、ドライバビリティの向上にも貢献します。変速時の衝撃も出にくいので、ややリッチに噴射していた分の燃料消費も削減できます。ギヤがたくさんあれば、それだけ1速分に割り当てるエンジン回転数の領域も狭まるので、より最適なエンジン回転数で走行できるようになり、シリンダーに噴射される燃料の量も少なくて済みます。これらの効果を全部合わせたら、おのずと燃費も良くなっちゃう。

 それに、ギヤをかみ合わせるというマニュアルトランスミッション的な構造なので、CVT(無段変速機)なんかと比べると伝達効率が良い分排熱が少なくて済みます。こちらも燃費に貢献する要因の1つになっています。

 その効率や燃費への期待からホンダも7速DCTを採用しましたが、小型車のフィットにジェッタほどのスペースはない! そんな場所を求めたら、エンジンルームからシャフトが突き出しちゃうかも

 そこでまさにコロンブスの卵的発想の配置が誕生しました。

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