新型「フィット ハイブリッド」は時速75kmまでモーターだけで走れちゃう!:今井優杏のエコカー☆進化論(5)(3/3 ページ)
自動車ジャーナリストの今井優杏さんが、独自の切り口で最新のエコカーや搭載技術を紹介する本連載。今回は、新開発のハイブリッドシステム「i-DCD」の採用により国内最高燃費を達成した、ホンダの新型「フィット ハイブリッド」を取り上げる。
高出力モーター内蔵7速DCTにより驚くべき小型化を実現
大胆にも7速DCTの末端にある1速ギヤを遊星ギヤにして、通常のギヤよりもコンパクト化し、モーターの構造上中空になっている部分にその1速ギヤを収納しちゃったのです。これこそ、i-DCDの心臓部と言ってもよい「高出力モーター内蔵7速DCT」なのです。
つまり入力側からの配列は、エンジン、デュアルクラッチ、その先にモーター内蔵の7速DCTという、驚くべき小型化が可能になりました。
ジェッタ ハイブリッドでは、わざわざエンジンとモーターの接続を切るためのクラッチを挟んでいましたが、i-DCDではこの機能をデュアルクラッチが兼務するので、構造のコンパクト化が可能になっています。さらに7速DCTのギヤボックスも、デュアルクラッチから末端のモーターまで伸びるメインシャフト上に奇数段ギヤを、デュアルクラッチを介してエンジンとつながるセカンダリーシャフトに偶数段ギヤを配置。2本並んだシャフそれぞれトに7速分のギヤを割り当てることで、全長を短縮するというワザも取り入れました。
i-DCDでは、デュアルクラッチでエンジンを切り離す一方で、モーターのトルクをメインシャフトとセカンダリーシャフトの間にあるカウンターシャフトを介して出力側(ホイール側)に伝えることでモーター走行を行います。もちろんスロットルペダルの踏み方にもよりますが、ふわっと踏めば走り出しから時速75km程度まで、相当広い範囲でモーター走行が可能に!
先代フィット ハイブリッドでは、エンジンとモーターを直接つないでいたことや、10kWというあまり高いとは言えないモーター出力のため、時速30kmくらいになればエンジンが動作してしまう。そんなこともあってか、口の悪い人たちからは「なんちゃってハイブリッド」なんて不名誉な呼び名を与えられていたのでしたが、新型フィット ハイブリッドのモーター出力は実に22kW、馬力にして29.5psに向上しました。
このi-DCDという渾身のシステムを得て、汚名を見事返上したというわけです。
ま、そもそも“ハイブリッド車”とは、内燃機関の動力+電力で動作するモーター動力を併せ持つクルマのことを指します(正確に言うと、これら以外でも2つの異なる動力を使っていればハイブリッド車です)。
だから、先代フィット ハイブリッドが『なんちゃって』とか言われてしまうこと自体が濡れ衣(ぬれぎぬ)なわけです。しかし、ご存じの通りトヨタ自動車の「プリウス」が、2個のモーターを持つより電気自動車に近い仕組みのシステムによってハイブリッド車のイメージをリードしていたので、それに対しての揶揄(やゆ)として言われてしまっていたんですね。やーもう、リアルに弱肉強食的なものを感じますが!
それにしてもどこまでも面白くなるハイブリッド戦争、今後も全く目が離せない!
実はホンダと同じ1モーター式のハイブリッドシステムを搭載するスバルの「XVハイブリッド」にも触れたかったのですが、フィット ハイブリッドが濃過ぎて字数が足りませんでした。反省、てへっ(と笑ってごまかす戦略)。
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