文書作成・翻訳コストを抜本的に低減するDITA活用の意味:ものづくり支援ソフトウェア製品レポート(9)
多くのシステム活用により効率化が進む製造業の現場だが、あまり効率化が進んでいないのがドキュメントの作成・管理分野だ。そんなドキュメント作成および管理の効率化を実現する仕組みとして「DITA」が注目を集めている。DITAの普及促進を進めるDITAコンソーシアムジャパン理事で事務局長を務める加藤哲義氏に話を聞いた。
「DITA」は「Darwin Information Typing Architecture」の略称で、技術情報による文書の作成や発行、配布するためXMLベースで作られたアーキテクチャだ。これはIBMが自社の制作業務のために開発したものだが、2004年にOASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)に寄贈され、以来国際的なオープンスタンダードとして誰もが利用できるものとなった。2009年には日本でDITAの普及を目指すDITAコンソーシアムジャパンが設立され、ベンダーやユーザーなど参加企業を増やしている。
コンテンツを“部品”のように管理
DITAの特徴は、文書内のコンテンツを「トピック」という1つの単位で小分けにして保有することができることだ。コンテンツを“部品”のように管理することで、“再利用”や“モジュール化”のようなことが容易に行える。例えば、機器のマニュアルを作成する場合に、業界の背景など毎回同じ内容を記述するのに、今までは毎回作成するケースがほとんどだった。しかし「トピック」を活用することで、同じ部分は過去に作成したものを使い、その製品固有の部分だけを新たに記述することができる。
DITAコンソーシアムジャパン理事で事務局長を務める加藤哲義氏は「グローバル化で多言語化が進む中、毎回全ての内容を記述し、それを各国語に翻訳するのは、作業の手間もコストも大きくなる。マニュアルなどでは毎回新しい情報が2割だというケースさえある。必要な部分だけ新たに記述し、さらにその部分だけ翻訳に出すようにすれば、コストは大幅に削減できる」とその価値を強調する。
さらにDITAはXMLでの記述であるため、HTMLやPDF、EPUBなどマルチユースが可能である点も利点だという。
30〜50%のコスト削減効果
DITAを導入するには、既存の文書をXMLのDITA形式で記述し直す必要がある。また文書作成者にも専用の記述方式などのトレーニングが必要だ。トピックには「概念(Concept)」「タスク(Task)」「参照情報(Reference)」「用語集(Glossary)」などの属性をタグで付与でき、これらの属性に応じた検索なども可能だ。
導入には1000万円前後に費用が掛かるが、文書の再利用率が一定以上ある場合、文書作成および翻訳費用などを30〜50%削減できるという。「当然企業の業務内容次第で合わない業態もあるが、再利用率が30%を超える場合は採用によりメリットが得られると考えている」と加藤氏は話す。
実際にDITAコンソーシアムジャパンへの参加企業も徐々に増えてきているという。会員としては制作翻訳サービス企業や製品ベンダーなど約30社が参加している。またユーザー企業でつくる「DITAユーザ交流会」にはデンソー、NEC、富士通、ブラザー工業、横河電機など9社が参加している。
加藤氏は「既に海外では多くの製造業がDITAを採用している。マニュアル作成などは特に製造業全体のプロセスで見れば、リソース負荷のかかる割には差別化に貢献しにくい部分である。グローバル競争が激化する中、製造業はより差別化に直結する分野に注力すべきで、その意味で必要のないところは効率化を図る必要がある。DITAにより効率的な文書作成を行うことで、競争力に直結する分野にリソースを配分できる」と話している。
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