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進撃の国産EMS、沖電気が描く日本型モノづくりの逆襲モノづくり最前線レポート(37)(3/3 ページ)

国内工場が逆境に立つ中で“製造現場の強さ”そのものを武器とし、国産EMSとして業績を伸ばしているのが、沖電気工業 EMS事業本部だ。最後発の国産EMSとして成功した秘密はどこにあるのか。また日本型モノづくりの勝ち残る道はどこにあるのか。沖電気工業 常務執行役員 EMS事業本部長の清水光一郎氏に話を聞いた。

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何でも海外生産という発想は安易過ぎる

 清水氏は「こういう工夫を行い作業効率を革新的に高めることができれば、人件費が数倍という状況であっても十分日本でコスト競争力を発揮していける。こういう工夫を行わずに中国やASEANと同じ工程で、生産していれば海外移管しかないという発想になる。地産地消という戦略があるのであれば別だが、人件費だけを考えて安いところを探し求める発想はあまりにも安易過ぎる」と指摘する。

 さらに清水氏は「日本人はあまり気付いていないが、日本の生産現場は“知恵”を生かした改善を自ら生み出すことができる。これは世界でも特殊な例だ」と、日本でモノづくりを行う価値を強調する。

 「私は米国や中国の生産にも携わったが、米国も中国もホワイトカラーとブルーカラーの業務は明確に区別されている。日本ではこの区別があまりなく、現場が管理の視点から考え、管理部門が現場で実際にいろいろ見て考えることで、革新的な“知恵”が出る。この力を有効に活用すべきだ」と清水氏は話している。

JIT唱和を行う社員たち
「JIT改革の精神十箇条」の唱和を行う社員たち。清水氏は「現場が管理の視点から考え、管理部門が現場で実際にいろいろ見て考えることで、革新的な“知恵”が出る」と日本のモノづくりの価値を強調する。

数年後には1000億円の事業に

 OKIでは2012年10月、田中貴金属工業のプリント配線板事業を買収。OKI田中サーキット(山形県鶴岡市)として、新たにEMS事業本部に加えた。これにより大型高多層基板の生産能力とともに、防衛・宇宙分野への足掛かりを得た。

 「2002年当時1200万人いた製造業従事者は、2012年には1000万人に下がった。今後さらに下がることだろう。日本企業が国内工場を維持できなくなる中、当社を利用する価値は高まってくると見ている」と清水氏は話す。

 2002年に売上高25億円でスタートした事業は2016年3月期には売上高500億円を目指す規模に成長している。さらに現在の4分野(通信機器、産業用機器、計測機器、医療用機器)に加え、新たに“エコ”関係領域にも参入し、生産を受託する計画だという。

 清水氏は「2014年3月期の目標は390億円。10年間で約400億円まで来た。500億円達成後は数年で売上高1000億円を達成したい。そのためには、新たな分野への参入が必要になる」と意欲を見せている。

 実は、EMS事業本部の象徴でもある「出世桜」の幹は、5つに分かれているという。「ちょうど桜に追い付いた形だ。日本のモノづくり力をさらに磨き、5つの幹で花を咲かせていきたい」と清水氏は話している。



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