「XVハイブリッド」は「EyeSight」と連携、モーター使用率を高めて燃費10%向上:エコカー技術
富士重工業のハイブリッド車「XV HYBRID(XVハイブリッド)」は、ステレオカメラを使った運転支援システム「EyeSight(ver.2)」と連携し、走行モーターの使用率を高めて燃費を10%向上できる機能「ECOクルーズコントロール」を搭載している。
富士重工業は2013年6月24日、同社初のハイブリッド車(HEV)となる「XV HYBRID(XVハイブリッド)」を発売すると発表した。水平対抗エンジン「ボクサー」と左右対称の四輪駆動システム「シンメトリカルAWD」に、独自開発のハイブリッドシステムを組み合わせて、高い運動性能と、20.0km/l(リットル)という良好なJC08モード燃費を両立したことを特徴とする。価格は249万9000円から。月間販売目標台数は550台。
XVハイブリッドのパワートレインは、最高出力110kW/最大トルク196Nmの排気量2lのボクサーエンジンとリニアトロニックCVT(無段変速機)に、最高出力10kW/最大トルク65Nmのモーターと、容量5.5Ahのパナソニック製ニッケル水素電池を組み合わせた構成となっている。ベース車である「XV」のJC08モード燃費は15.8km/lであり、ハイブリッドシステムの搭載によって燃費が約27%向上したことになる。
「HVハイブリッド」のパワートレイン構成。車両前部のリニアトロニックCVTには最高出力10kWのモーター、荷室下部にはインバータや電池パックを1個にまとめたユニットが組み込まれている(クリックで拡大) 出典:富士重工業
一般的に、インバータや電池パックを追加搭載するHEVは、ベース車と比べて、車室内や荷室容量が減少する傾向にある。しかし、XVハイブリッドは、インバータや電池パックなどを1個のユニットとして、荷室下部に収めることで、ベース車と同等クラスの荷室容量を実現した。VDA(ドイツ自動車工業会)法による荷室容量は、XVの380lに対して、XVハイブリッドは344lを確保した。
運転支援システムとの連携が実用燃費に効く
XVハイブリッドは、ステレオカメラを使った運転支援システム「EyeSight(ver.2)」を搭載する「2.0i-L EyeSight」グレードが用意されている。価格は、EyeSightを搭載しない「2.0i-L」グレードより10万5000円高い278万2500円である。これは、富士重工業が販売している車両のEyeSight搭載モデルと非搭載モデルの差額と同じである。
しかし、2.0i-L EyeSightグレードについては、先行車両との衝突を回避可能な「プリクラッシュブレーキ」や、車間距離を維持して先行車両を追従する「全車速追従機能付クルーズコントロール」といったEyeSightの基本機能に加えて、ハイブリッドシステムとEyeSightの連携によって実現した新機能「ECOクルーズコントロール」を利用できる。
このECOクルーズコントロールには3つの機能がある。1つ目は、その名の通り、全車速追従機能付クルーズコントロールを利用している際に、モーターの使用率を高めるとともに回生ブレーキを最大限に活用し、実用燃費を向上する機能だ。特に、渋滞した高速道路などで効果を発揮するという。
2つ目は、エンジンを使わずにモーターだけで走行する「EV走行」が可能な速度域を広げる機能である。XVハイブリッドは、時速40km以上になるとEV走行をやめてエンジン+モーターによるハイブリッド走行に移行するが、ECOクルーズコントロールの使用中は時速80kmまでEV走行を維持できる。3つ目は、エアコンの動作を抑制して燃費を低減する機能である。
これら3つの機能により、実用燃費を約10%向上できるとしている。
EyeSightとハイブリッドシステムの組み合わせが新たな付加価値を生む
2010年5月発売の「レガシィ」から搭載が始まったEyeSight(ver.2)は、約10万円という安価な運転支援システムとして業界にインパクトを与えた。しかし最近では、ダイハツ工業の「スマートアシスト」(関連記事:新型「ムーヴ」の燃費は「ワゴンR」以上、走行性能でも「N-ONE」に対抗)をはじめ、より安価な運転支援システムが登場しており、当初の存在感は薄れつつある。
今回のECOクルーズコントロールは、EyeSightのような運転支援システムと、エコカー技術の主流となっているハイブリッドシステムを組み合わせて、さらなる付加価値を生み出した先進的な事例といえそうだ。2.0i-L EyeSightグレードの今後の売れ行きが注目される。
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