電池セル不具合の原因は検査工程で加わった2種類の衝撃、三菱自が調査報告:電気自動車
三菱自動車は、プラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」、電気自動車「i-MiEV」と「MINICAB-MiEV」のリチウムイオン電池セルで発生した不具合について、検査を行う「スクリーニング工程」で起きた2種類の“過度な衝撃”が原因だったと結論付けた。改善策を取りまとめ次第、5月上旬にもリコールを届け出る。
三菱自動車は2013年4月24日、プラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」、電気自動車「i-MiEV」と「MINICAB-MiEV」のリチウムイオン電池セルで発生した溶損や短絡、発火などの不具合についての調査結果を公表した。不具合の原因は、検査を行う「スクリーニング工程」で起きた2種類の“過度な衝撃”であると結論付けた。
電池セルに不具合が発生する可能性があるのは、これまでに出荷した全てのアウトランダーPHEV4305台と、i-MiEVとMINICAB-MiEVが合わせて115台。改善策を取りまとめ次第、ゴールデンウィーク明けの5月上旬にも、国土交通省にリコールを申請する方針だ。改善措置としては、1台当たりのコストが100万円ともいわれる電池パックの交換を予定している。
アウトランダーPHEVは、4月23日に、走行用モーターとその制御システムを不具合原因とするリコールを発表したばかり。(関連記事:「アウトランダーPHEV」がリコール、不具合箇所は電池ではなくモーター)。三菱自動車の広報部は、「顧客の皆さまに2度手間を取らせてしまうが、4月23日発表のリコールについては、後日申請する電池セルのリコールとは別に、早急に納車して対応していただきたい」としている。
「アウトランダーPHEV」のパワートレイン構造。4月23日のリコールと、今回原因が判明した電池セルの不具合を併せると、エンジンと後輪モーター本体以外に問題を抱えていたことになる。(クリックで拡大) 出典:三菱自動車
「床への落下」と「4倍の振動」
アウトランダーPHEVの電池セルの不具合は、神奈川県で発生した溶損と、東京都と岐阜県で発生した短絡の3件が報告されている(関連記事:“過度な衝撃”が主因か、「アウトランダーPHEV」の電池セル不具合)。一方、i-MiEVとMINICAB-MiEVの電池セルの不具合は、水島製作所(岡山県倉敷市)における車両搭載前の検査時に、電池パックが発煙/発火を起こしている。
これらの不具合を起こした電池セルは、サプライヤであるリチウムエナジージャパンが栗東工場(滋賀県栗東市)の製造ラインで、2012年12月にスクリーニング工程を新たに導入して以降に生産されたものだった。このスクリーニング工程は、製造したリチウムイオン電池セルへの金属片や微粒子の混入を検査して、スクリーニング(選別)するためのもの。同工程で用いる専用の検査装置に電池セルを設置して振動を加えると、混入した金属片や微粒子が正極側に移動する。この後で電池セルの電圧を計測すると、良品と比べて電圧が低下するので、問題のある電池セルを選別できる。
調査では、スクリーニング工程で加わった“過度な衝撃”が2種類あることが判明した。1つは、作業員が検査装置に電池セルを設置する際に、何らかの原因で電池セルを床に落としたことによって加わった衝撃である。作業員が電池セルを落とした際と同じ約1.1mの高さから、約300個の電池セルを使った落下試験を行ったところ、この衝撃によって正極側に短絡が発生する可能性があることを確認した。落下させた電池セルへの充電による溶損の発生も再現できたという。
通常、電池セルを落下させた場合、不具合品として選別される。しかし、今回不具合を起こしたアウトランダーPHEVなどに、正常品として搭載された原因は分かっていない。電池セルを床に落としたことを含めて、作業員による人為的ミスである可能性が高い。
もう1つは、検査装置で振動を加える際に、過大な加速度が加わったことによって発生した衝撃である。通常は2.5G以下の加速度で振動を加えるが、その4倍以上の加速度を加えて検査を行った事例があったことが判明した。この衝撃によって負極の部品が欠けてしまい、短絡の要因になることも再現試験で確認したという。
スクリーニング工程を廃止、エイジング工程の時間を2倍に
今後リチウムエナジージャパンの電池セル製造ラインでは、不具合の原因になったとみられるスクリーニング工程を廃止する。スクリーニング工程の代替としては、クリーンルームの清浄度を高めて異物混入の可能性を減らすとともに、電池セルを一定時間静置した後に不純物の沈殿の有無から異物混入を見つける「エイジング工程」の時間を2倍にする。
三菱自動車は、リコール申請や電池セル製造ラインの改良が済み次第、5月中にもアウトランダーPHEVの生産を再開させる方針だ。
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