「アウトランダーPHEV」のリチウムイオン電池セル不具合、80個のうち1個で発生:電気自動車
三菱自動車は、2013年1月に発売したプラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」に搭載するリチウムイオン電池セルが発熱し、リチウムイオン電池パックの一部が熔損するという不具合が発生したと発表した。電池パックを構成する80個の電池セルのうち、1個が何らかの原因で過熱したという。
三菱自動車は2013年3月27日、同年1月に発売したプラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」に搭載するリチウムイオン電池セルが発熱し、リチウムイオン電池パックの一部が熔損するという不具合が発生したと発表した。同社はアウトランダーPHEVのユーザーに、原因が判明するまで、外部からの充電や、エンジンを使った充電(チャージモード)を行わないように呼びかけている。
この不具合は、3月20日に販売店から顧客に納車する前の在庫車両を普通充電で満充電状態にしてから3月21日まで放置した後、車両を移動させようとした際に、車両が動かず周辺で異臭もしたことから判明した。車両下回りを確認した結果、「アウトランダーPHEV」の床下部に組み込まれているリチウムイオン電池パックの一部に溶損跡がみられたという。
不具合の発生した車両は、満充電状態にしてから放置している間に、電池セルの過熱によって溶損が発生している。
リチウムイオン電池パックのサプライヤであるリチウムエナジー ジャパンが内部を確認したところ、電池パックを構成する80個の電池セルのうち1個が何らかの原因で過熱し、その電池セルの周辺が溶損したことが分かった。溶損の範囲は、電池パックの中で80個の電池セルを3ブロックに分けて配置しているうち、1ブロックのみに限られていた。
この不具合によって、販売店の店舗が損傷したり、従業員が負傷したりといった被害はない。車両そのものも、電池パックの溶損を除いて損傷はなかった。
三菱自動車は、不具合の原因として、リチウムエナジー ジャパンの電池セル製造ラインで発生した可能性があるとしている。電池セルを製造する際、内部に異物が混入すると、セパレータで分離されているはずの正極と負極が、この異物によって直接接触することがある。このような状態の電池セルを充電/放電しようとすると、直接接触している部分で短絡が起こり過熱する。2006年に、ソニーエナジー・デバイス製のリチウムイオン電池を搭載するノートPCで発生した異常発熱事故も、電池セル内部への異物混入が原因だった。
「B787」の不具合とは無関係
今回の不具合発生について、リチウムエナジー ジャパンの親会社であるGSユアサの広報担当は、「三菱自動車と協力して原因究明に全力を尽くす」とのみ回答している。
GSユアサは、リチウムイオン電池システムの不具合で運航が差し止められているボーイングの最新鋭航空機「B787」にもリチウムイオン電池セルを供給している。ただし、ボーイングや日米当局の調査において、GSユアサのリチウムイオン電池セルが直接の原因になったという報告はない。
B787のリチウムイオン電池セルは、航空機や衛星向けに製造されているもので、正極材料にコバルト酸リチウムを用いており、リチウムエナジー ジャパンとは異なるラインで製造されている。
一方、リチウムエナジー ジャパンは、車載向けに特化してリチウムイオン電池セルを製造している。正極材料には、コバルト酸リチウムよりも熱に安定なマンガン酸リチウムを用いている。
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