“過度な衝撃”が主因か、「アウトランダーPHEV」の電池セル不具合:電気自動車
三菱自動車は、プラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」で発生したリチウムイオン電池セルの不具合の調査内容について中間報告を行った。サプライヤであるリチウムエナジー ジャパンの製造ラインの「スクリーニング工程」で、リチウムイオン電池セルに過度の衝撃が加わったことが主な要因になったもようだ。
三菱自動車は2013年4月10日、プラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」で同年3月に発生したリチウムイオン電池セルの不具合の調査内容について、中間報告を行った。サプライヤであるリチウムエナジー ジャパンの製造ラインの「スクリーニング工程」で、リチウムイオン電池セルに過度の衝撃が加わり、内部構造が変形したことが主な要因になったもようだ。
アウトランダーPHEVのリチウムイオン電池セルに起因する不具合は、車両登録前に溶損を起こした1件(3月27日に発表、関連記事:「アウトランダーPHEV」のリチウムイオン電池セル不具合、80個のうち1個で発生)と、利用者が車両を発進させようとしたときに「EVシステム異常」と表示された1件(3月29日に発表)、顧客に納車する前に満充電状態にしたところ「EVシステム異常」と表示された1件(3月29日に発表)、合計3件が報告されている(表1)。3月29日発表の2件は、電池セルの外観に異常はないものの、電池セル内部で短絡を起こした痕跡を確認している。なお、3件とも、利用者や販売員の負傷、建物の損傷などは発生していない。
発生場所 | 神奈川県(3月27日発表) | 東京都(3月29日発表) | 岐阜県(3月29日発表) |
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車両状態 | 登録納車前 | 顧客に納入済み(総走行距離15km) | 登録済み納車前 |
不具合発生までの流れ | 3月20日に初めて販売会社で満充電。3月21日に車両を移動させようとしたところ、「ON」にはなるが「READY」にはならず、車両下回りから異臭が発生 | 3月23日に利用者が「READY」にしたところ、「EVシステム異常」の表示が繰り返し出て、Dレンジに入れても発進せず | 3月25日に初めて販売会社で満充電。定休日の3月26日を挟んで、3月27日に電池残量計の表示量が2目盛減っていたので再度充電を開始したが、充電開始時よりさらに2目盛減少し、「EVシステム異常」が表示された |
不具合の内容 | リチウムイオン電池パックの上蓋中央部に溶損跡が確認された | 販売会社へ入庫し確認、リチウムイオン電池パックと電池セルとも外観上の異常はなし。故障診断機で電池電圧異常を検出 | リチウムイオン電池パックと電池セルとも外観上の異常はなし。故障診断機で電池電圧異常を検出 |
調査結果 | 電池セル内部に短絡痕を確認。電池パックを構成する80個の電池セルは3つのブロックに分けて配置しているが、そのうち1ブロックのみが発熱し、周辺の樹脂部品が溶けていた。また、電池セルの内部圧力上昇によりセルが変形(溶損)していた | 電池セル内部に短絡痕を確認。溶損は発生していない | 電池セル内部に短絡痕を確認。溶損は発生していない |
表1 「アウトランダーPHEV」のリチウムイオン電池セルで発生した不具合内容 |
スクリーニング工程で「落下させるように」設置
今回の中間報告で挙げられたスクリーニング工程は、製造したリチウムイオン電池セルへの金属片や微粒子の混入を確認する検査工程である。専用の検査装置に電池セルを設置して振動を加えると、混入した金属片や微粒子が正極側に移動する。この後で電池セルの電圧を計測すると、良品と比べて電圧が低下するので、問題のある電池セルを選別できる。
不具合の主な要因とされる“過度な衝撃”は、この検査装置に手動で電池セルを設置する際に加わったとみられている。落下させるように設置すると、その衝撃によって電池セルの正極が変形することが分かった。EVシステム異常と表示された2件で、内部に短絡した痕跡が見つかった電池セルでも、同様の変形が確認されている。ただし、電池セルが溶損するという不具合については、スクリーニング工程での過度な衝撃に加えて、さらに他の要因が組み合わさって発生したと想定している。
三菱自動車は、電池セルの溶損を発生させた要因の特定をはじめとする最終結論を、4月末までに出したい考え。最終結論が出るまでは、アウトランダーPHEVの出荷と販売の停止を継続する方針である。
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