HPが完全裏方に徹する、「HP Converged OEMプログラム」とは:小寺信良が見たモノづくりの現場(番外編)(3/3 ページ)
日本ヒューレット・パッカードが発表したサーバのOEM事業「HP Converged OEMプログラム」。従来のホワイトボックス(市販サーバ)を利用するものと、どこが違うのか? そこにはHPならではのいくつかのポイントがあった。
さらに梱包箱へのマニュアルの同梱、梱包箱もHPロゴではなく無印箱へのロゴ貼り付け、梱包テープに至るまで無印が選択できるなど、HPカラーを完全に消しての出荷が可能だ。
納品後のサポートに関しては、問題点を自社部分とサーバ部分に切り分ける必要があるが、サーバ部分の問題であればHPのコールセンターが対応する。コールセンターは全世界から利用でき、英語対応専用なので、英語圏以外の海外拠点での問題対応が格段に楽になる。サービス拠点は全世界170カ国あり、そこでの保守が受けられる。
製品価格に関しても、独自プログラムで対応する。最初の購入価格をドル建てで計上し、これが基準価格となる。以降は全世界で、現地通貨の為替レートで販売する。価格は毎月見直されるため、その時の相場にリニアに追従する価格で導入が可能だ。現地通貨が高い時が導入のチャンスというわけである。
単純にサーバを買ってきて納品するだけならば、ホワイトボックスをベースにした方が廉価であろう。しかし長期の製品供給や保守部品の確保、また電話サポートなどの運用コストまで考えると、HPのプログラムを利用するメリットがあるという。
既に米国では2005年よりサービスインしており、HPのOEMパートナーで、監視事業を営むIntransa社の場合、消費電力を70%削減、インストール時間を99%削減、顧客からのサポートコールを20%削減できたという。
これまではUNIXサーバやストレージではOEM展開を行なってきた同社だが、以前はメーカー to メーカーのOEMであったという。今後はグローバル展開を狙うサービス事業者に向けてのOEM事業も、並行して展開していく事になる。
日本HPとしては、医療分野、通信、印刷、製造、監視システム、放送/映像分野での導入を見込んでおり、2015年までに同社X86サーバ事業の10%まで、この事業を成長させたいとしている。
筆者紹介
小寺信良(こでら のぶよし)
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手掛けたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
Twitterアカウントは@Nob_Kodera
近著:「USTREAMがメディアを変える」(ちくま新書)
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