ヘリコプターで撮影した被災地の空撮映像を衛星通信で高速伝送、三菱が開発:災害対応技術
大規模災害が発生した場合、迅速な被災地域の状況把握が何よりも大切だ。三菱電機は、ヘリコプターと通信衛星を衛星回線でつなぎ、撮影した空撮映像や音声データをリアルタイムに伝送する「ヘリコプター直接衛星通信システム(ヘリサットシステム)」を開発し、総務省消防庁に納入した。
巨大地震や津波などの大規模災害が発生した場合、被災地域の正確な情報を速やかに収集しなければならない。なぜなら、一刻も早い初動活動・応急救護活動が求められるからだ。
現場の状況を早く・正確に捉えるための有効手段の1つとされているのが、被災地域の映像を空から撮影できるヘリコプターの活用だ。
これまで、被災地域の空撮は「ヘリコプターテレビ電送システム(ヘリテレ)」と呼ばれるシステムが活用されていた。しかし、この方式だと、撮影映像を地上の中継局に送信する必要があるため、中継局の整備が不可欠。さらに、山岳の谷間やビル影といった電波遮蔽(しゃへい)環境では通信が困難で、空白地帯ができてしまうという課題を抱えていた。
そこで新たに考案されたのが、ヘリコプターと通信衛星を衛星回線でつなぎ、撮影した空撮映像や音声データをリアルタイムに伝送する「ヘリコプター直接衛星通信システム(ヘリサットシステム)」である。これであれば、山岳やビルの影響を受けず、中継局なしに、撮影映像や音声データを日本全国へ一斉配信できる。
世界初をうたう、このヘリサットシステムを開発したのは三菱電機だ(ヘリテレの開発も三菱電機が行った)。2013年3月28日、同社はヘリサットシステムを総務省消防庁に納入したことを発表した。ヘリコプターに搭載する機上設備は京都市消防局の消防庁ヘリコプターに実装され、地上設備は京都市消防局と消防庁(千代田区霞が関)に設置される。2013年4月上旬から運用を開始するそうだ。
ヘリサットシステムは、ヘリコプターのブレード(プロペラ部)の回転に同期した「間欠送信技術」を採用しており、空撮映像を衛星に安定送信できる工夫が施されている。また、最新の画像圧縮技術である「H.264/MPEG-4 Advanced Video Coding」を採用し、空撮映像のリアルタイム伝送を実現する。その他、ヘリコプターと地上局間での双方向の音声・データ通信や、地上通信網や衛星通信地上局から国内各地へ映像・情報の再配信も行える。ヘリコプターに搭載する設備は、機内装備が約20kg、機外装備が約35kgである(カメラ関連装備は除く)。省電力設計でヘリコプターに搭載されている標準電源で利用することが可能だ。
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