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通信網の遮断を空から救え!! ――小型無人飛行機が孤立した被災地との間を結ぶ無線中継システム

情報通信研究機構(NICT)は、小型無人飛行機に搭載する無線中継装置と、地上に設置して用いる簡易型の地上局装置とで構成される「小型無人飛行機を活用した“無線中継システム”」を開発した。

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NICT

 情報通信研究機構(NICT)は2013年3月18日、大規模災害などで周囲から孤立した被災地域との通信を迅速に確保できる無線中継システムを開発したと発表した。

 同システムは、米エアロバイロンメント社製の小型無人飛行機「PUMA-AE」に搭載する無線中継装置と、地上に設置して用いる簡易型の地上局装置とで構成される。孤立地域に地上局装置を設置し、小型無人飛行機により、その地上局周辺に無線LANによる通信サービスを提供することで、スマートフォンやPCなどを用いた被災状況の把握や安否確認など、被災を免れた地域との通信環境を迅速に確保できるという。

使用する小型無人飛行機の外観
使用する小型無人飛行機の外観。翼長2.8m、機体重量5.9kg

 東日本大震災では、通信設備や道路などが破壊されたため、数多くの孤立地域が発生し、現地の被災状況が把握できずに救援活動が遅れたり、現地の住民の安否確認や不足物資の要求ができなかったりなどの事態が発生した。この問題を受けて、NICTは「小型の無人飛行機を活用した“無線中継システム”」を開発した。

 小型無人飛行機は、滑走路がなくても飛行可能で、コンピュータ制御で自律的に決められた飛行経路を飛ぶことができる。また、地上局装置は三脚などを利用した軽量かつ簡易なもので、小型無人飛行機とともに自動車などが使用できない場所であっても手軽に持ち運ぶことが可能だ。

 小型無人飛行機1機で中継した場合、4〜5km程度の離れた地上の2地点を結ぶことができる。また、2機同時に飛ばし、2機間を中継させれば通信距離をさらに2km程度延ばすことが可能だという。通信速度は500kbps程度、最大通信可能時間は無人飛行機に搭載されたバッテリー容量の制約から1時間程度だとする。

無線中継システム地上局 (左)小型無人飛行機を活用した“無線中継システム”(2機中継の場合)/(右)地上局の構成 【※画像クリックで拡大表示】

機体名 PUMA-AE(米エアロバイロンメント社製)
翼長・機体重量 2.8m、5.9kg
ペイロード 0.5kg
飛行時間・飛行距離 2〜4時間、15km
耐風速 25ノット(13m/s)
最高飛行高度 5000m(実証実験では青葉山周辺森林上空150〜600mを飛行予定)
動力、運用方法 電動、手投げ発進、失速回収、GPSによる自律飛行、防水仕様
使用周波数 データリンク、制御リンク:2GHz帯(いずれも実験局免許で運用)
その他 騒音は小(50m離れれば、ほぼ無音)
表1 使用する小型無人飛行機の仕様

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