モノを買わせるには、「自己実現の欲求」を満たせ:ヒット商品を生むコンセプトマイニング&QFD(2)(3/3 ページ)
人はどんどんレベルの高い要求を満たしたくなる。その最上位は、「自己実現の欲求」。魅力ある商品の企画は、その欲求を満たすことへつなげることだ。そこでコンセプトマイニングが活躍する。
コンセプトマイニングとQFDを使った商品企画プロセス
お客さまが製品やサービスを購入するに当たって、その機能(情緒的機能を含めて)のみを判定しているのではなく、それから得られる価値を評価しているといえます。つまり「価値の評価」とは、一足飛びに将来の自己実現を目指しているのでなく、「取りあえず当面の目標を製品やサービスによって、どのように達成できるか」の評価であって、製品やサービスは自己実現のための小道具なのです。
従って、ターゲットとしたユーザーの次の自己実現に向けた機能を与えられれば、それが本当に求めている機能であり、ユーザーの価値観と合致して「これが欲しかった」と言ってもらえる可能性が高くなります。だから、ここではまずターゲットユーザーのこれまでの経験を想定して、「次の自己実現目標」を設定するという流れで自己実現のための価値創造を考えていくのです。
具体的なコンセプトマイニングの手順は、図8のようになります。
まずステップ1では、ターゲットユーザーを設定します。そして、ステップ2では、そのターゲットユーザーについて分析します。それは、ターゲットユーザーがどのような背景や傾向、価値観を持っているのか、過去から将来までをシナリオ仕立てで明確化するのです。
例えば「実現山登り表」のように、過去の経験を踏まえつつ、遠い未来の自己実現を目指すために“取りあえずの一歩”の実現を考えて行動するのが人間だという仮説で作成することが多いのです。
続いて、顧客シナリオによって表現されるルーツニーズをより具体的なニーズ表現に落とし込み展開するというステップ3「ニーズ分析」に移ります。このためには、「パーソナルニーズ抽出表」というものを使います。
ステップ4では、顧客シナリオをより具体的なシーンに展開します。
さらにステップ5では、これまでのデータを基にしてコンセプトを抽出しながら、シーンとニーズを具体的な要求項目に落とし込み、企画の軸足を定めることになります。そのときには、例えば「戦略キャンパス」などを用いて、要求項目にメリハリを持たせて訴求力のあるコンセプトにするのがポイントです。
最後にステップ6として、開発商品の具体化として、要求項目を品質特性に変換し、商品の仕様を設定するのです。
繰り返しになりますが、コンセプトマイニングとは、「お客さまが商品によって感動や歓喜する姿を事前にデザインして、商品に織り込む方法」です。
従って、以下の4つのメリットがあると考えています。
- お客さま価値を事前に設定できるため、市場検証がやりやすく、その結果、自信を持って開発が進められる
- 開発段階での仕様の設定が自信を持って迷いなく行える
- 開発の狙いや商品コンセプトを、説得力を持って経営陣にプレゼンできる
- 組織として実施できるので、次の商品も連続してヒットできる
このプログラムにより、ユーザーのルーツニーズを考えることで情緒的機能を加えた潜在ニーズを表出できます。また今後の開発に際して、メンバーの意思を統一でき迷いなく推進できますし、新たな機能を持った商品コンセプトの品質特性への落とし込みにより具体化につなげることができます。そのときにTRIZが活躍することになります。
以上が、コンセプトマイニングとQFDを使った商品企画プログラムの概要です。次回は、「ゴルフ場」をターゲットユーザーとして、このプログラムを適用した場合の事例を説明します。(次回に続く)
Profile
桑原 正浩(くわはら まさひろ)
熊本県生まれ。1985年鹿児島大学卒業。KYB(カヤバ工業)株式会社、オムロン株式会社で研究開発や商品開発に勤務後、技術問題解決コンサルタントとして独立。現在は、株式会社アイデア、コンサルティングセンター長。実務型TRIZコンサルタントとして、国内外企業の技術開発テーマの創造的問題解決のコンサルティングに携わる一方、大学や産業振興財団の中小企業支援育成事業、日科技連の次世代TQM構築PJなどでも活躍中。「TRIZで日本の製造業を元気にする」が合言葉。
著作物に「効率的に発明する:ロジカルアイデア発想法TRIZ」(SMBC出版)、「使えるTRIZ」(日刊工業新聞社「機械設計」連載)、韓国では「TRIZによる論理的問題解決:アイデアレシピ」(韓国能率協会出版)がある。ブログ「TRIZコンサルの発明的日常閑話」
Twitterアカウント:@kuwahara_triz
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