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TRIZは使えないと思っていますか?災害未然防止のための設計とTRIZ【活用編】(1)(1/2 ページ)

TRIZは問題の本質的な原因を探索できる手法。それなのに「TRIZは使えない」といわれてしまう理由とは?

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 『災害未然防止のための設計とTRIZ:「私の経験上」という言葉が出たら、ご用心』に続き、本連載は「活用編」ということで、TRIZの使い方について3回に分けて解説していきます。可能な限り実践的なイメージが伝わるように書くつもりですのでよろしくお願いします。

TRIZって何?

 TRIZという言葉を初めて聞かれる方も多いと思います。TRIZとは一体何なのでしょうか。私は、「全世界の特許情報(約250万件)から導かれた知見を活用した問題解決の発想メソッド」であると考えています。つまり、「先人達の知恵のエッセンスを使って、短い期間でできるだけ漏れがなくアイデアを生み出すための方法」といえます。

 英語の“The Theory of Inventive Problem Solving”(直訳:発明的問題解決の理論)を意味するロシア語の頭文字をアルファベット表記して“TRIZ(トゥリーズ)”となります。

 開発者はロシア生まれのゲンリック・アルトシュラー(Genrick Altsuller 1926〜1998年)です。旧ソビエト連邦当時海軍の特許審査官だったアルトシュラーは、多くの特許に接する中で、発明にはある法則性が存在することに気付き、それを体系化することで“誰でもが発明家になることができるはずだ”と考えたのです。

 実は、TRIZが日本に紹介されたのは比較的最近の1996年のことです。日経メカニカル(当時)で、「超発明術」としてセンセーショナルに取り上げられたため、いわばアイデアの玉手箱のように思われていた面は否めません。そのためか2000年前後に一度下火になってしまいます。つまり「TRIZは使えない」と。いや、「使えない」のではなく、「使い方が悪い」のです。TRIZは、問題解決のアイデアを豊富に生み出すための思考プロセスなんだという原点に立ち返った現在では、多くの企業がTRIZを採用し技術開発に活用している事実がそれを如実に語っています。

われわれはTRIZをどう理解し改善したか?

 先に述べたように、TRIZとは問題解決のための思考プロセスです。先人たちが優れたアイデアを生み出した思考パターンを借用して、自分の問題解決に役立てようというものです。それは、一般的には図1のように理解されています。

図1
図1 TRIZの基本構造

 そこには、大きく以下の3つの思想があります。

  • (a)問題解決のパターンは、産業・科学の分野を超えて繰り返されている。
  • (b)技術システムの進化は、産業・科学の分野を超えて繰り返されている。
  • (c)技術革新は、当該分野以外の科学的法則から実現される。

 つまり、自分たちが抱えている問題について、自分たちの知識経験の中だけで解決策を探すのではなく、他分野の知識経験も参考にすることで、解決アイデアの幅も広がり、質も高まるという考え方ですね。

 例えば、分割原理というパターンを利用したものは、例えば分解式の釣り竿(ざお)や組み立て式の家具、コーヒー用のシュガースティックなどいろんな分野(業界)を横断して活用されています。また、社会的インパクトの大きな技術革新は、機械式でピックアップの振動を電気信号に変換していたものが、CDやDVDなどのレーザー信号を電気信号に変化することで音質の劣化を防ぐことができる音楽プレーヤーに例を見ることができますね。いまは、さらにiPodを代表とするフラッシュメモリなどの磁気信号に進化しています。

 これら3つの詳細は次回説明しますが、実はこれだけでは本当にTRIZを使うことは難しいのです。その理由は、問題解決の思考プロセスと考えたときにはっきりします。つまり、真の問題を把握することと、発想したアイデアをまとめ上げるという部分がまだ不足しているのです。われわれは、これらの課題を解決すべく、図2のようなプロセスを標準的なフローにしました。

図2
図2 TRIZを活用した問題解決のフロー

問題の本質を探るための3つの方法

 世の中には、問題発見のためのフレームワークがたくさん存在します。いずれも、当初定義された問題を、問題の範囲と深さで分析して真の問題を再定義しようとするものです。アインシュタインは、「優れた問題発見者が、優れた問題解決者になれる」といったトーンの言葉を残していますが、それほど問題の入り口をどのように決めるかは、いつも頭を悩ませる部分です。

 われわれは、図2のフローに記載してあるように、以下の3つのツールを使って、当初の問題を分析しています。

  1. マルチスクリーン(9画面法):システムを取り巻く状況を探索する。
  2. 機能-属性分析:システムを構成する要素の作用を分析する。
  3. 原因-結果分析:問題を起こしている状況の因果関係を探る。

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