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魅力ある芝刈り機を開発するには?ヒット商品を生むコンセプトマイニング&QFD(3)(1/3 ページ)

今回はゴルフ場で使用する芝刈り機を例に、コンセプトマイニングとQFDを使った新製品開発について解説する。

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 前回は、コンセプトマイニングとQFDを使って「顧客経験価値」という自己実現欲求に着目した商品企画プログラムの概要をお話ししました。今回、それを使って「ゴルフ場で使用する芝刈り機」の新商品企画の流れを解説します。

プロセスの振り返り

 コンセプトマイニングとQFDを活用した商品企画プロセスについていま一度簡単に振り返ってみましょう。

 コンセプトマイニングとは、「お客さまが商品によって感動したり歓喜したりする姿」を事前にデザインして、商品に織り込む方法でしたね。従って、以下のような4つの効果が期待できます。

  • お客さま価値を事前に設定できるため、市場検証がやりやすく、その結果、自信を持って開発が進められる。
  • 開発段階での仕様の設定が自信を持って迷いなく行える。
  • 開発の狙いや商品コンセプトを、説得力を持って経営陣にプレゼンできる。
  • 組織として実施できるので、次の商品も連続してヒットできる。

 いわゆる、商品ありきから始まる商品企画ではなく、お客さまの感動や価値観に焦点を当て、その姿を想像力の力で作り上げていくイメージということができます。

 そのステップは、図1です。


図1 コンセプトマイニングの手順

 では、実際に「ゴルフ場で使用する芝刈り機」について、コンセプトマイニングを使用した場合を説明します。

ゴルフ場の芝刈り機をテーマに選んだ理由

 企業が、価格やコストのたたき合いから脱却するためには新たな競争軸を持った商品コンセプトが必要です。

 今回は、手法の適用効果を示すため「業務用品」について実施してみました。なぜなら、業務用品の買い手はプロであり機能と価格が厳しく比較されますが、商品によって提案されて初めて新たなニーズに気付く場合もあるからです。また製造者側は「お客の要求など分かり切っている!」と思っていても、潜在ニーズを反映した確実な競争力を得る重要度付けが本当にはできていない場合もあります。そのための事例として業務用品である「ゴルフ場の芝刈り機」を採り上げました。


図2 業務用と消費者用商品との特徴比較

ターゲットユーザーの設定

 一般消費者が購入者であり、ユーザーでもある商品の場合はターゲットユーザーの絞り込みが比較的容易です。一方で、自動車用の部品やその関連システムなどのように最終商品を組み立てるセットメーカーが直接的な顧客の場合は、ターゲットユーザーの絞り込みが難しくなります。

 その場合はまずターゲット企業を設定し、そこでの使用シーンを想定するとともに、最終商品に搭載され利用される状況も検討しなければいけません。

ターゲット企業の設定事例

  • 雄大な景色や、インターチェンジに近いロケーションの良さもあって堅調な客数を維持してきたが、近年客数が下降気味。
  • 環境対応のための電動ゴルフカートや、楽しいプレーのためにゴルフナビもいち早く導入してきた。
  • 難しいコース設定や手入れの良さで知られている地方では名門とされるゴルフ場。

 次にターゲットユーザー(企業)のプロファイルを検討します。このとき、商品が“B to B”である場合と、“B to C”である場合とではユーザーの種類が異なるので、注意が必要です。つまり一般的に“B to B”の場合は、購入品を選ぶ人物と、購入後に実際に使用する従業員という二重構造となる場合が多くなるのです。

 また、商品の用途が業務用の場合と消費者用の場合とで購入者と使用者が別になる場合も多くなりますので、ターゲットユーザー(企業)のプロフィールをしっかり想定しなければいけません。

ターゲット企業プロファイル設定事例

  • ホテルなどを経営する企業グループで、従業員に対してしっかりした教育を行っており、従業員の意欲も高い。
  • ゴルフ場イコール環境破壊のイメージを持たれないよう広告も行ってきた。
  • 電動カートやゴルフナビの導入など、お客の満足を高めるための投資は積極的に行ってきた。
  • 現在、経費を削減しながら満足度向上を図りたいと考えている。
  • 部門ごとの責任者の権限は大きいが結果に対しての評価もしっかり行われている。

ターゲットユーザーの未来展望の検討

 次に、ターゲットユーザーのプロフィールを参考にしながら、ユーザーの過去から現在、将来までのエピソードを“山登り表”を用いて自己実現シナリオ(ユーザーのありたい姿)の形に設定します。想像力をフル回転させてください。ターゲット企業としての“成長山登り表”と、その企業でのターゲットユーザーの“自己実現山登り表”をともに設定すれば、企画の精度が増します。

ターゲット企業(ゴルフ場)の成長山登り表事例


図3 成長山登り表

 続いて、ゴルフ場の芝管理者の自己実現山登り表を同じように作成し、その中からキーワードを抽出します。


図4 芝管理者の成長山登り表

 そうすると、以下を抽出できます。

  • グリーン管理者は芝の管理について責任を負っている。
  • 日常的な維持・管理に関する芝刈機の選定については決定できる。
  • グリーンの満足度を維持し高めていくさらなる改善・継続が求められている。
  • 現有人的能力で日常業務の効率化を図ることで、土壌改善に当てる時間を捻出したい。

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