米政府が次世代電池研究の集中拠点を設立へ、5年間で1億2000万ドルを投入:A123システムズのことはさておき
米国エネルギー省は、電気自動車やスマートグリッドに用いる次世代二次電池の研究開発を目的に、アルゴンヌ国立研究所を中心とした研究拠点を設立する。5年間で1億2000万米ドル(約98億8000万円)を投資する計画だ。
米国エネルギー省(DOE)は2012年11月30日(米国時間)、電気自動車(EV)やスマートグリッドに用いる次世代二次電池の研究開発を目的に、アルゴンヌ国立研究所(イリノイ州シカゴ)を中心とした研究拠点を設立すると発表した。5年間で、1億2000万米ドル(約98億8000万円)を投資する。
研究拠点の名称は、JCESR(Joint Center for Energy Storage Research、J-Caesarと発音)である。JCESRには、アルゴンヌの他、ローレンスバークレー、パシフィックノースウエスト、サンディアの各国立研究所、SLAC国立加速器研究所などDOE傘下の5つの研究所が持つ、二次電池の研究開発に関するリソースを集中させる。
これらの他、ノースウェスタン大学、シカゴ大学、イリノイ大学シカゴ校、同アーバナ・シャンペーン校、ミシガン大学といった中西部の5つの大学も研究に参加する。さらに、JCESRの研究成果を事業化するために、化学大手のDow Chemical(ダウ・ケミカル)、半導体製造装置大手のApplied Materials(アプライド・マテリアルズ)、ビル設備や車載機器を扱うJohnson Controls(ジョンソン・コントロールズ)、中西部のクリーンエネルギー事業に投資しているClean Energy Trustが企業パートナーとなっている。
イリノイ州は、同州の雇用創出計画「Illinois Jobs Now!」から、500万米ドル(約4億1000万円)を拠出して、アルゴンヌ国立研究所内にJCESRの研究施設を建設する。その後、米国内を代表するエネルギー蓄積デバイスの研究拠点とするために、別途3000万米ドル(約24億7000万円)を投資する予定もあるという。
JCESRは、DOEが設立した4番目の集中研究拠点となる。これまでには、オークリッジ国立研究所に「原子炉のモデリングとシミュレーション」、カリフォルニア工科大学に「太陽光からの燃料生成」、ペンシルバニア州立大学に「エネルギーの高効率利用が可能なビルシステム」という3拠点を設立している。2012年初に発表した「重要材料」は、5番目の拠点として現在設立の途上にある。
A123システムズが破綻も、投資は継続
米国大統領のバラク・オバマ氏は、1期目で掲げていた「グリーン・ニューディール政策」の一環として、EVや二次電池を開発する研究プロジェクトに総計24億米ドル(約1976億円)を投資していた。この投資を受けていた企業の代表として知られるA123システムズは、2012年10月に経営破綻を発表している(関連記事)。
1期目のグリーン・ニューディール政策は、成功したとは言えない状況にある。しかし、2期目のオバマ政権も、「all-of-the-above energy strategy(可能な限り国内でエネルギーをまかなう戦略)」に従って、JCESRへの投資を決断したようだ。
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