速度差60kmでも衝突回避可能なトヨタの新型プリクラッシュ、価格は10万円台に:安全システム(2/2 ページ)
トヨタ自動車が新たに開発したプリクラッシュセーフティシステムは、富士重工業の「EyeSight」をはじめとする、価格10万円前後のものに対抗して開発された。最大の特徴は、衝突回避可能な速度差について、競合他社が時速30km以内としているところを、その2倍となる時速60kmまで広げたことだ。
競合他社の2倍の速度差に対応
今回発表したプリクラッシュは、このミリ波レーダーだけを用いるプリクラッシュの機能をさらに強化したものだ。価格は、14万7000円で据え置くか、ミリ波レーダーのコスト削減が進んでいることを含めて、戦略的に10万円前後まで値下げする可能性もある。
改良点は2つある。1つは、先行車両との衝突可能性が高まっている状態で、プリクラッシュによる警報にドライバーが気付いてブレーキペダルを踏んだときのブレーキの制動力を補助する「ブレーキアシスト」の性能を高めたことだ。先行車両が時速20km、新開発のプリクラッシュを搭載した自車両が時速80kmで走行している状態、すなわち速度差が時速60kmからでも、衝突する前に先行車両と同じ時速20kmまで減速できるという。
もう1つは、従来は衝突が不可避な状態になってから自動ブレーキで減速して衝突被害の軽減を図っていたところを、衝突が不可避な状態になる前から予備的に自動ブレーキを働かせておくようになったことである。先行車両が時速20km、新開発のプリクラッシュを搭載した自車両が時速50kmで走行している状態から、自動ブレーキによって減速し、衝突を回避できる。ただし、自動ブレーキによって衝突を回避できる速度差は、自車両の速度など状況によって異なるため、時速15〜30km以内としている。
先述した各社のプリクラッシュとの最大の違いは、1つ目の改良点である、速度差が時速60kmからでも衝突を回避できる機能だ。競合他社のプリクラッシュは、2つ目の改良点と同様に、先行車両との速度差が時速30km以内であれば、自動ブレーキによって衝突を回避できることを特徴としている。しかし、それ以上の速度差については、自動ブレーキによって衝突被害を軽減できるとしか言及していない。
トヨタ自動車によれば、「追突事故の90%以上は、先行車両との速度差が時速60km以内のときにで起きている」という。新開発のプリクラッシュであれば、ドライバーがプリクラッシュの警報ブザーやディスプレイ表示に気付いてブレーキを踏み込むという条件付きではあるものの、速度差が時速60kmまでの衝突事故を回避できるわけだ。
同社は、近々発売する新型車から、新開発のプリクラッシュを順次展開する方針である。2012年12月末の発売が予想されている新型クラウンに搭載される見込みだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 大衆車にも求められる「予防安全」
自動車の予防安全システムに用いられているセンサーのうち、事故回避に最も役立つものがミリ波レーダーである。この車載ミリ波レーダーについては、現在、大衆車にも広く搭載できるように低価格化を図るべく開発が進んでいる。本稿ではまず、車載ミリ波レーダーの特性や、使用されている周波数帯域に関する各国/地域の法規制について説明する。その上で、大手ティア1サプライヤや送受信ICを開発する半導体メーカーによる低価格化に向けた取り組みを紹介する。 - 新型「レクサスLS」は“止まる”プリクラッシュを搭載、進化型自動ハイビームも
トヨタ自動車の新型「レクサスLS」は、「スピンドルグリル」の採用などの大幅な外形デザイン変更以外に、新たに搭載した先進安全システムにも注目すべきだろう。プリクラッシュセーフティシステムは、時速24マイル(約38.6km)以下であれば自動ブレーキで停車して、事故を未然に防げるようになった。 - 年間7000件発生するペダル踏み間違い事故の被害を軽減、トヨタの新安全システム
トヨタ自動車は、駐車場内でのペダルの踏み間違いやシフトの誤操作による衝突事故被害を軽減できる安全システムを開発した。国内で年間約7000件発生しているペダル踏み間違いによる急発進事故の被害軽減に寄与できるという。