速度差60kmでも衝突回避可能なトヨタの新型プリクラッシュ、価格は10万円台に:安全システム(1/2 ページ)
トヨタ自動車が新たに開発したプリクラッシュセーフティシステムは、富士重工業の「EyeSight」をはじめとする、価格10万円前後のものに対抗して開発された。最大の特徴は、衝突回避可能な速度差について、競合他社が時速30km以内としているところを、その2倍となる時速60kmまで広げたことだ。
ミリ波レーダーやレーザーレーダー、ステレオカメラなどのセンサーデバイスを使って前方車両を検知し、自動ブレーキによって停車して衝突回避や衝突被害の軽減を可能にするプリクラッシュセーフティシステム(以下、プリクラッシュ)の開発競争が激化している。
これまでは、センサーデバイスにステレオカメラだけを用いる富士重工業の「EyeSight」が、10万円という低価格化によって先行していた。しかし、2012年後半に入って、三菱自動車が新型「アウトランダー」向けに「e-Assist」、マツダが新型「アテンザ」向けに「i-ACTIVSENSE」を立て続けに発表。e-Assistは、搭載車と非搭載車の価格差が9万5000円と、EyeSightよりも安価である。e-Assistよりも多機能のi-ACTIVSENSEも、低価格での提供が期待されている。
さらに、Volkswagenが2012年10月に日本市場に投入した小型車「up!」が、レーザーレーダーを用いたプリクラッシュの標準搭載を特徴の1つとして展開を図るなど、安価なプリクラッシュへの注目は高まっている。
センサーフュージョンタイプとミリ波レーダータイプ
これらに対して、トヨタ自動車は2012年11月12日、センサーデバイスにミリ波レーダーだけを用いるプリクラッシュの改良版を発表した。
同社は、ミリ波レーダーやステレオカメラ、赤外線カメラなど複数のセンサーデバイスの情報を統合する、センサーフュージョンタイプのプリクラッシュを、高級車ブランドの「レクサス」などに展開している。2012年10月に日本市場で発売された新型「レクサスLS」には、速度差が時速40km以下であれば衝突を回避できる進化版が採用された(関連記事)。
ただし、センサーフュージョンタイプのプリクラッシュは、レクサス向けとあって極めて高価だ。プリクラッシュ以外にもさまざまな機能を搭載しているものの、メーカーオプション価格は136万5000円である。
一方で同社は、センサーデバイスにミリ波レーダーだけを用いるプリクラッシュを、ハイブリッド車「プリウス」や高級セダン「クラウン」、高級ミニバンの「アルファード」や「エスティマ」、大型SUV(スポーツ多目的車)「ランドクルーザー」などに幅広く展開している。プリクラッシュと連動してベルトを巻き取る「プリクラッシュシートベルト」やクルーズコントロールなどの機能も備えており、先述した競合他社のプリクラッシュと同等の価格帯となる、14万7000円というオプション価格で提供している。
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