太陽光150%の「国」が実現、南太平洋から:世界の再生可能エネルギー(5)(2/2 ページ)
化石燃料の高騰に最も苦しんでいるのはどの国だろうか。島しょ国家、さらに主要交通路から外れた島しょ国家だ。赤道直下の南太平洋に浮かぶトケラウは、まさにこの問題に悩んでいた。同国がどのように150%の太陽光発電システムを導入したのかを紹介する。
太陽電池+二次電池で需要を150%まかなえる
トケラウに導入したシステムの最大出力は1MW*2)。太陽電池モジュール4032枚の他、パワーコンディショナー392台、出力の平準化と夜間の電力利用のために1344台の二次電池を設置した*3)。PowerSmart Solarによれば、プロジェクトの本来の目的は総電力需要の90%を太陽光発電システムでまかなうことだったが、完成後は150%をまかなうことができるという。
*2) 系統に接続されていない非連系タイプの太陽光発電システムとして世界最大だという。なお、長期間日照が得られない気象条件の場合を考慮して、ココナッツ油発電機で二次電池を充電できる構成を採った。太陽光発電システムは海に面しているため、架台の鋼材には羊毛から取れるラノリン油を塗っている。風速毎時230kmまでのサイクロンに耐えられる仕様だとした。
*3) 太陽電池モジュール1枚当たりの出力は約230W。パワーコンディショナーとしてドイツSMA Solar Technologyの系統非連系用の製品「Sunny Island」を採用した。二次電池には大型の鉛蓄電池を用いた。
投入した資金は元が取れるのか
プロジェクトの資金は、ニュージーランド外務通商省による750万ニュージーランドドル(約600万米ドル)の長期低利貸付に頼った。
トケラウの人口は3つの環礁を合わせても1500人。1500人に750万ドルでは元が取れないのではないだろうか。PowerSmart Solarによれば、そうではない。
トケラウではこれまで1日16時間の発電用に、年間2000バレルのディーゼル燃料が必要であり、輸送費も含めて年間100万ニュージーランドドルを必要としていた。トケラウは本国から約3000kmも離れており、燃料の輸送費用は1バレル当たり500ニュージーランドドルも掛かっていたのだという。
他国も続々と太陽光へ
南太平洋の島しょ国は世界でも最も石油に依存している。水力発電などは利用できず、小規模な火力発電やディーゼル発電しか利用できなかったからだ。火力発電は小規模になればなるほど高コストであることも不利に働いている。
再生可能エネルギーの採用は欧州や日本だけの動きではない。エネルギー源の選択肢が少ない島しょ国家にも十分に役立つ。トケラウに続くのは同じく南太平洋に浮かぶフィジーだ。2013年中には再生可能エネルギーで100%の電力需要を満たす計画を立てており、2020年までにツバルとクック諸島が同様に100%を目指したシステム導入を計画しているという。
次回の番外編 ―空港も港もないのにどうやって設置? 「島国」の太陽光チャレンジ― では、太陽光発電システムの設置工事の様子について、トケラウから送られてきた写真を交えて紹介する。
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