クラウド上のCAEソフトを使ってみた:3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(17)(3/3 ページ)
クラウド上のCAE「Autodesk Simulation 360」って、どんな感じ? ひとまず、筆者が持っていた3次元モデルで、深く考えず、ちゃっちゃと計算してみた。
解析実行する
ということで解析実行してみましょう。
解析実行するには、一番上のメニューから「Analysis」(解析)を選択します。すると解析のための実行メニューが表れます。
解析実行するために十分な情報が定義されていない場合、「Run Simulation」(シミュレーションを実行する)が使えません。ですが今回は、図12のように青信号になっているので大丈夫なようです。
なお、解析タイプはここで一番右側のメニューから変更もできます。
いよいよ実行開始です。解析を開始すると、図13のようなダイアログが現れて、解析の進捗を随時確認できます。
さて、この解析にはどのくらい時間がかかるのでしょうか。ということで、この解析のプロセスを以下のような動画にしてみました。
解析が始まると、最初に「Job uploading to the cloud」(訳:解析ジョブをクラウド上にアップロードしています)というメッセージが出てきます。この段階では、まず解析実行のために解析ジョブがクラウドの環境に送られているということですね。ちなみに、解析の実行開始からこの状態が30秒ぐらい続いていました。
しばらくすると、「Job running on the cloud」(クラウド上で解析ジョブを実行中です)というメッセージに変わりました。実際に計算が実行されている最中ということです。
そこから25秒ぐらいで、今度は「Job finished on the cloud; results incoming」(クラウド上の解析ジョブが完了しました:結果を受け取る)というメッセージが表示されました。解析結果が、クラウド上から自分のPC上に送り返されてきていることも分かります。
小さいデータなら、ローカルPCでもいいかも
図14のように、完全に解析結果が表示されるまでに1分18秒ほどでした。実際の解析にかかった時間が全体の3分の1程度でした。この程度の規模の解析であれば、ローカルPCの計算リソースでやった方が早いのかもしれません。当然のことでしょうが、計算が大規模であるほど、クラウドで計算するメリットが大きくなりそうです。
解析結果は、変位やひずみ、応力などごく一般的なものがデフォルトで表示できます。結果表示のオプションが、メニューを見る限り、ほかにもいろいろあるようですが、まだ試せていないので、ここでは割愛します。
なお、ひずみや応力などを同時計算することで、結果の同時表示も可能です。
クラウド上で計算するメリットとは
クラウドの解析ツールだからといって、何か特別なことをするわけではありません。単に「解析用のモジュールが、クラウド上のどこかにあるだけ」です。
この「解析のためのクラウド」は、冒頭でも書いたように、年間55万円または112万円ほどで使うことができます。年間ライセンスということは、この金額が毎年かかってくるわけです。このソフトに限らず、年間ライセンス形式のソフトでは、パーマネント(永久)ライセンスのものと比較して、「一体、どちらが得なのか」ということが常に悩みの種になるでしょう。
この答えを出すのは、なかなか難しいかもしれません。しかし、先ほど説明したように、単品の応力解析や比較的小規模なアセンブリレベルであれば、ローカルPCのリソースでも十分なのでしょう。しかし、動的解析のような計算リソースを食う解析や、大規模な解析を比較的頻繁に、または同時実行するような場合には、クラウド上での解析を考えてみるのもよいでしょう。
そんなレベルになってくると、それを実行できる解析ソフト自体も高価になってきますし、さらに本格的になってくれば、HPCなどとハードウェアの投資が膨らんできます。
Simulation 360による大規模解析のパフォーマンスがどのくらいのものか、私自身はまだ把握していません。しかし、パフォーマンスが十分だとすれば、ライセンスのコストや保守費用のコスト、さらにはハードウェア自体への投資を考えたとき、クラウドの計算リソースを利用することの意味は十分にあるのではないでしょうか。
実際に、解析のために自社リソースと多くの時間を消費し、それにより、他の作業を圧迫しているようなデータをお持ちの方は、「クラウドに任せたときの計算のパフォーマンスはどうなのか」「クラウドに計算リソースを預けたとき、他の作業に対する影響はどう変わるか」などを検証したら、面白いかもしれません。
それから、私はCFDに関しては詳しくないので試しませんでしたが、そちらが専門の方もぜひ、「実際、どうなのか」検証してみてはいかがでしょうか?
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