「安定した工程」を作るには? ゼロから学ぶ「管理図」の使い方:実践! IE:現場視点の品質管理(13)(4/4 ページ)
生産現場のカイゼン活動に必須の手法を紹介。今回はさまざまな用途に用いられる管理図の、それぞれの性質や使い方をじっくり見ていこう。
安定した工程とは何か
生産した製品や部品には、必ず品質のバラツキが発生します。このバラツキの幅が、あらかじめ決められた規格値の範囲内にあれば「管理状態にある」「安定状態である」といえます。
5Mの安定
製品や部品を生産する過程で品質に影響を及ぼすものは、「5つの要素」から構成されています。これら5つの要素の品質のばらつき具合が総合されて製品全体の品質が決定付けられます。これら5つの要素を「生産の5M」といいます。それぞれの要素は、人(Men)、方法(Method)、機械(Machine)、材料(Material)、計測(Measurement)です。5つのMが安定していれば、製造する製品や部品のバラツキは、いつもほとんど同じバラツキ方を示します。実際には、5Mの状態が常に同じであるということはありませんので、製造工程の状態がどのようになっているかを調べてみる必要があります。
もし、工程に何らかの異常があれば、バラツキの形が管理状態にあった場合とは異なっているはずです。この場合、ヒストグラム(参考記事)を書いてみると、規格の範囲からはみ出して不良品が発生しています。
このように、工程に異常が発生しているときは、簡単で客観的な方法で異常の発生を知らせてくれる何らかの仕組みがあれば助かります。このツールが「管理図」なのです。
管理限界
管理限界は、正常状態で起こり得るバラツキの範囲を示したものです。従って、打点した全てのデータが管理限界内に収まっていれば、「製造工程は安定した状態にある」ということが分かります(図3、4参照)。
逆に、管理限界外に飛び出したデータがあれば、「製造工程に異常が発生している」ことを示していることになります。
このように、管理図は、品質を生み出している製造工程に異常が発生したかどうか、あるいは、その兆候を監視する役割を持っている優れたツールといえます。
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製品の規格限界(許容値)は、顧客の品質要求水準として決められています。これを管理図と結び付けて説明すると、製品の規格限界(上限と下限)が管理限界(UCLとLCL)内にある場合は、工程能力(Process Capability)が十分にあるといえます。
「工程能力を高める」
一般に、生産数量に対しては生産能力、品質については工程能力と表現します。工程能力とは、質的能力を示すものです。工程能力を高めることは、品質管理の目標でもあります。管理された工程でも、工程能力が不足している場合は改善を行う必要があります。
作成するときに使うデータの性質によってさまざまな管理図があることは、本稿で述べた通りです。
次回からは、広く活用されていて、理解していなければならない代表的な管理図でもある「X-R管理図」「P管理図」「C管理図」の作成手順について説明していきます。
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筆者紹介
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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