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S&OPプロセスを支える仕組みはどう考えればいいの?リサーチペーパーでひも解くS&OP(4)(2/2 ページ)

プロセスややるべき組織変更は分かってきた。だけれど、それを実行するために必要なことってどんなものだろう? IT技術について考えてみる。

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 近年、IT技術が進み、処理能力もデータをためる容量も、データを取り込む仕組みもずいぶんと進化しました。企業で扱うデータは複雑怪奇なデータ連携のプログラムを経ることなく、データ収集ができるようになってきています。このおかげで業務の達成度を定量的に把握するための指標を定めたKPI(Key Performance Indicatorの略で、「重要業績評価指標」 と呼ぶ)を定め、企業が自分たちの達成度合いをモニターし、常にその値がどのように変化したかを知ることが可能になりました。

 特に需要計画、供給計画を定める際に、経営者の「お墨付き」をもらうにはさまざまなデータを視覚化して見やすくする必要があります。こうした用途のために、BIシステムの活用が進んできています。


コックピットの例(画面サンプル提供:アシスト)

 KPIを数字だけで管理するのではなく、グラフ化して相互に見ることで施策に偏りがないかを把握できます

 例えば、財務データや売り上げ目標に対する達成率をモニターし、経営者側に理解をしてもらえるような「経営のコックピット(またはダッシュボード)」と称した管理指標を表示する仕組みを使うことがあります。

 コックピット上に表現されているグラフの元データは、ERPシステムからバッチで抽出されたもので、最新のデータといえども、数週間前のデータであることもあります。POS(Point of Sales)が「いつ」「どれが」「どのくらい」「どこで」という情報を集め、物流改革を起こしたように、ERP内に流れている業務データを素早く収集をすることが肝要です。

 経営状況を適切に把握するためのKPIを定め、これから起こるであろう事象がどの程度自社の活動に影響を及ぼすかなど、シミュレーションや新たな情報の切り口による分析を行います。ですから、鮮度の高いデータが集められていてこそ、本当に必要な判断を下さなければならない重要な場面に直面したときに、それが重要な意味をもちます。

 ここでの新たな情報の切り口とは、為替の変動比率を加味した売り上げ予測、コストシミュレーションなど、新たに考慮したい項目を自由にレポートに追加できる機能を持っているかということです。

 数字を作るために、わざわざシステムから新たにデータを引き抜きだしたり、BIにロジックを追加したり、スプレッドシートを駆使して作業を行うのは、時間がかかり過ぎます。より迅速にシナリオを用意でき、製造計画を立てられるようになれば、リスクがどの程度存在するのかを事前に把握することが可能になります。


BIを定型的なレポート作成ツールの延長線上で考えているのであれば、DWHから必要なデータを取り出し、きれいに加工して必要な人に届ける「だけ」で済む。高額なBIシステムを導入するよりも、より簡易なレポート作成ツールやスプレッドシートが有効だ(サンプル画面提供:JDAソフトウェア)

情報共有のキーワードは「生かす」

 情報分析で得たデータを基に経営者に軌道修正の提案を行ったり、日々の企業活動において分析結果から仮説を立案し、行動をもって検証しダイナミックにオペレーションを行い、その結果をまたフィードバックする。

 極めて基本的なことですが、業務の各部門がお互いの情報を共有し、データを生かすことで精度よく「分析→仮説→実証」できるようになります。

 ここで、ソフトウェアの特性についてお話をしておきます。

 ソフトウェアはスーツ(背広)のタイプでいい表すと分かりやすくなります。

  • 完全なオーダーメイド=自社開発
  • 既製服、レディメイド=ツール、パッケージの利用

 現在では、ERPシステムとしてハードウェアベンダーやERPシステム専門の会社が作ったソフトウェアを調達して利用しているものと思います。

 時代は、作るよりも使うことに主眼を置き、パッケージソフトウェアに足らない部分を補うように機能を追加したり、カスタマイズしてなるべく自分の体にフィットさせて使うように考えが変わってきています。

オーダーメイドのソフトウェアを利用するメリットとデメリット

 オーダメイドの良さは、全て自社の基準や必要な機能を細かく注文して作成できることです。

 しかし、注文するまでに、必要な要件がまとまらず、実際に利用するまでに1年以上かかるかもしれません。それ以前に、出来上がったソフトウェアを利用しようとしたときには、作り始めた当時と経済・市場の状況が変わってしまい、機能が不足したり陳腐化して使えなくなる可能性がリスクになります。

パッケージソフトウェアを利用するメリットとデメリット

 パッケージソフトウェアの良さは、既にいろんな企業で実証された機能が搭載されており、ベストプラクティスが盛り込まれていることです。

 ただし、自社の業務に合わせるには、多少のカスタマイズが必要になるかもしれません。しかし、オーダメイドで1からソフトウェアを実装するよりもはるかにコストは安く導入でき、運用までの期間を短くできます。1つだけ気を付けなければならないのは、ソフトウェアベンダーの製品に縛られてしまわないようにすることです。

パッケージソフトウェアにもいろいろ

 パッケージソフトウェアの中にもS&OP専門のものもあれば、必要な機能をERPやBIを組み合わせて実現させる方法もあります。

 パッケージソフトウェアの全てが自社のニーズに合うものばかりではなく、ジャストフィットする部分を最大限利用して、足らない部分だけを補って使うことも必要です。

 S&OP専門のソフトウェアはグローバルな企業で積極的に取り入れられており、世界中を同じオペレーションで統一しています。各種レポートも同じように取り出すことができれば、個別に開発する工数を削減できます。また共通のナレッジやノウハウも残しやすいというメリットが生まれます。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

 ITを業務に取り入れるといっても、なにを導入するか決定した時点でシステムの陳腐化が始まってしまいます。決定には、ソフトウェアの導入に成功しているユーザーの事例を基にすることはとても重要です。必要ならばユーザー訪問をお願いすることも考えましょう。

 システムの陳腐化を防ぐためにも、事業が成長するに従って、都度、必要なIT技術を見究めなくてはいけません。見直す際にも、適切なコストで実現させるためには、きちんとしたRFP(Request For Proposal)を作成する必要があります。

 その選定に際しては、技術にブラックボックスを作ることないように考える必要があります。そして特定のベンダーに縛られることのないように考える必要があります。

 松原氏が書かれていた記事「経営と現場の情報は『超』シンプルにつなぐべし」にあるように「人間系の正しい判断を支えるものこそがS&OP」なのです。

 企業システムにはこれで完成という言葉はありません。いつも注意深く、最初の命題である「情報を『正しく、素早く、把握』すること そして適切な人に届けること」を実現するための改善ポイントを見つけ出し、あるべき姿を追求することが必要です。

リサーチペーパーを読んで

O営業事業統括本部長

 いままでは月次の売上、在庫の予算達成状況速報が社内BIの中心機能だった。

 営業の受注予測に対する実績や在庫予測に対する実績などにより、月次での確実なフィードバック情報が取れれば需要と供給の調整も楽になるだろう。

 さらにマネジメント・レビューで承認済みの方針が毎月示され、実績データとのギャップ分析が行うことができれば、事業の課題も明確になり、関連部門が管理された仕組を実感できたら理想的なんだが……。

 情報システムと経営企画室のシステム企画担当部長にも相談してみよう!

S生産計画グループマネジャー

 似たような話をERPの導入で随分議論したのを思い出した。

 たしかあのときは、製販調整のプロセスをERPの枠組みにうまく載せる仕組みが見当たらず、ERPでの計画機能の適用を断念したのだ。この仕組みが実現できたらERPの計画機能を再導入する事でより効率的な業務の流れを作れるかもしれない。あの地獄のような会議の時間をもっと短縮できるかもしれないぞ!

編集部から

次回はいよいよ最終回です。

第一部連載「S&OPプロセス導入 現場の本音とヒント」で悩みを抱えていた2人は、いよいよ韓国の大手エレクトロニクス企業のケースを参照しながら自社の改革に動きます。お楽しみに。


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