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S&OPプロセスを支える仕組みはどう考えればいいの?リサーチペーパーでひも解くS&OP(4)(1/2 ページ)

プロセスややるべき組織変更は分かってきた。だけれど、それを実行するために必要なことってどんなものだろう? IT技術について考えてみる。

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この連載について

第一部連載「S&OPプロセス導入 現場の本音とヒント」では、いま製造業の現場で各部門が抱えている悩みと、解決の糸口を得るまでを紹介してきました。本稿を含む第二部「リサーチペーパーでひも解くS&OP」では、第一部の課題を解決すべく、各部門の視点から見たS&OPプロセスの意味、効果を検討していきます。以降、本編はリサーチペーパーの形式で紹介していきます。


今回の主筆:S&OP-Japan研究会 三木治

この物語は……

S&OP-Japan研究会メンバーが創作した100%フィクションの物語と、各分野の専門家、現場のプロの解説によって構成されています。連載に登場する人物は解説で言及するものを除き、特定の個人・企業・団体に関係するものではありません。



S&OPプロセスがちゃんと動くのに必要なこと

 S&OPをシステムとして企業内に展開するには、販売実績データや財務データと従来のSCMシステムとの間でデータを連携し、在庫の最適化や事業収益の最大化を図るための供給計画や需要計画を集める必要があります。

そのためには、ERPシステムからSOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)やETL(Extraction, Transformation and Load:抽出・変換・挿入)システムを使って情報を集めます。その集めた情報を基に製販調整会議を実施し、調整された数字に妥当性を持たせ、最終的には経営者に承認された計画として立案できるように整えていきます。

 こうした目的をかなえるには、市場、経済動向によって刻々と変化するデータを経営層が的確に把握できるような仕組みを作ることも重要です。

 収集したデータは目的別にDWH(Data WareHouse)にまとめて保管し、大量のデータをすぐに分かりやすく見るためには、BI(Business Intelligence)といった製品を活用する方法があります。

 個別のIT技術を集めてS&OPをサポートするのではなく、S&OPを専門にサポートするパッケージ・ソフトウェアも販売されています。

 今回は、S&OPをサポートするソフトウェアまたはIT技術についてお話をしたいと思います。

S&OPを実践するために用意すべき仕組みとは?

 S&OPを構成するITの内訳をまとめたS&OPのマインドマップが発表されています*。マインドマップ全体は、S&OPプロセスを高めるための要素として、企業・組織・情報・プロセスの4つを挙げており、それぞれに含まれる要素を整理しています。本稿で言及する「情報」については、大きく「データ」と「システム」の2種類に分類されています。このうち、本稿で言及する「システム」について、このマップを基に解説していきましょう。


『Supply Chain Movement』(2012, Q1)からの抜粋

* Supply Chain Movement 2012 Q1 p. 32-33。コンサルティング企業InvolcationとSupply Chain Movement紙によって制作されたものです。図を含むコンテンツ全体はオンライン版、PDF版が公開されています。


 マップを見ると分かるように、システムを構成している要素は次の5つが挙げられています。それぞれをまとめると次のようになります。

番号 項目 内容
1 ERP 紹介するまでもなく基幹システムのことで、大規模なシステムから、中小企業でも扱える手軽なソフトウェアまでがパッケージソフトウェアとしてそろっています。
ただ、さまざまな機能が搭載されていても、実際に使われる機能は財務中心で、生産計画やスケジューリングなどは自社で用意したプログラムや別の専用ソフトウェアを利用している企業が大多数です。
 ERPは1社で1種類のシステムを使うことが多いのですが、グローバル企業やM&Aによって買収された場合には複数のERPを利用しなければならないこともあります。
2 需要予測 いままでの製造業では、プロダクトアウト志向の考え方が中心で、生産部門は、需要が多かろうと少なかろうといったん決めた生産計画に従って生産するというのが一般的でした。
生産計画には、人間系でスプレッドシートを使い簡単なシミュレーションをしたり、テンプレートを利用して需要を予測したりするケースも見受けられます。
少し進んだ企業では、CRM(顧客関係性マネジメント)を利用して受注状況や統計的な予測機能を使っています。
3 供給計画 リソース計画や在庫管理などのERPの生産管理関連とAPS(上級生産スケジューリング・システム)と財務数値とリンクさせ、経営層の視点での意思決定を可能にできます。
4 経営者向けツール OLAP(オンライン分析)などの分析システムや、What-Ifシミュレーション機能やシナリオ機能が搭載されているソフトウェアです。
5 ビジネス・インテリジェンス(Business Intelligence :BI) 企業内外のデータを蓄積・分類・検索・分析・加工して、ビジネス上の各種の意思決定や課題の発見と素早い行動のための判断する情報を迅速に可視化し、インタラクティブに分析・解析するためのソフトウェアです。業務レベルの担当者から、経営者に至るまで利用することで業務効率を上げ、経営判断に役立たせます。

 マインドマップでは上記の5つしかまとめていませんが、6番目の項目として「データの収集」も挙げておくべきでしょう。

番号 項目 内容
6 データの収集 S&OPの各プロセスで利用するデータを収集するには、自社開発ではなく、例えばバッチ連携ではETL製品を利用したり、リアルタイムなデータを連携させるためにはSOA技術を使うことを考えましょう。収集したデータは目的に応じてDWHに保管し、主にBIで利用します。


項目4「経営者向けツール」の機能例 図はJDAソフトウェアの場合

 S&OPの目的は、情報を「正しく」「素早く」「把握」すること そして適切な人に届けることにあります。

 物の流れとその情報を管理するためのERPシステムを導入しても、その中に流れているデータが「必要な人に必要な形で」「正しく」「タイミングよく」届けることができれば収益に大きく貢献できます。

 例えば、需要・供給の情報を素早く判断するための情報を製販調整会議の場で提供できるなら、いままでは難しいといわれていたERPへタイムリーに需要情報などを反映させるドライバーとしての利用が期待できます。

 そのためには、製販調整会議で使われるデータや現場から上がってくるデータを素早く取り込み、さまざまな情報の切り口を提供し、お互いの判断が妥当なものかその場でシミュレーションを即座に実行し確かめるような機能が要求されてきています。

 しかし、ERPシステムを利用していても、需要・供給に関する情報はいまでもバッチでレポート作成したり、スプレッドシートを使って分析をする企業が多いのが現実です。実際に起こるであろう事象をパラメータとして用意し、需要や製造計画シミュレーションを行うにもバッチ処理では人間の思考時間との間にギャップがあるため、素早い判断の足かせになってしまいます。

 今日のめまぐるしい為替の動きや、刻々と変化する在庫の状況、他社の販売状況などのさまざまな要因を加味してすぐにシミュレーションができるようになることもS&OP活用の利点です。

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