ダイダイダイレクト祭! その2「Inventor Fusion」:3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(13)(2/2 ページ)
さまざまなCADのダイレクト編集機能をレビューする企画の2回目。Inventor FusionはCADのように見えるが、CADではない。では、一体何なの?
AutoCADでも使える
ところで、面白いことに、Inventorのような3次元CADだけではなく、「AutoCAD」や「AutoCAD Mechanical(ACM)」なんぞとも、Fusionは連携します。ちなみに、AutoCADというと2次元CADという印象をお持ちかと思いますが、少し前から結構な3次元機能も付いていたりします。もちろん3次元での本格的な設計というと、InventorだのRevit(Autodesk Revit:建築向け3次元CAD)だの……という話になると思いますが。もしAutoCADの3次元機能をご存じなければ、一度見てみると面白いかもしれません。
ACMは、平たく言うと、「すごく便利に機械製図をするための、AutoCAD」と考えていただいてよいでしょう。ACMでは3次元データを基にして、図面ビューを作成できるわけですが、変更を加えなければならないときが少々面倒です。要するに、そんなときには、ACMの3次元データをFusionに渡して、そこで修正だけしてから、さらにACMにモデルを戻す、という具合に使えば便利なのです。
前述したように、他にも設計周りの話がありますが、今度はもう少し、別の使い方も見てみましょう。
取りあえず、構想設計
いきなりFusionで、「設計プロセスを始める」なんていうのもありみたいです。
例えば構想設計レベルでは、「簡単に形状を作って、手軽に修正する」ということが重要だと思います。そこが通常の3次元CADよりはFusionの方が便利というわけです。それで、ある程度、設計が固まってきたら、Inventorに3次元データを渡します。
3次元CADで詳細設計をしているけれど、レイアウト検討だの構想設計だので2次元を使うというケースがまだ多いのではないかと思います。そんなときに、Fusionでやると便利かも?
ところで「Fusionの位置付け」が、「通常は、“つなぐこと”が難しい」あるいは、「つないでも、データ的にうまく連携ができず、不連続が起きがちな」設計プロセス間における「コネクタ的役割」――というか「接着剤的役割」だということを書きました。
実際、Fusionというものが「独立した位置付け」であることが、「コネクタという位置付け」を明確にしているようです。
デザイン/スケッチツールやレンダリングツールと連携
もっとデザイン寄りの話をすれば、デザインも“初めの初め”は手書きのスケッチがやはり主流でしょう。「SketchBook Designer」のようなスケッチツールを用いて、最初のスケッチを描くことも多いのではないでしょうか。そして、そのスケッチをベースに3次元モデルを作る、なんてこともあると思います。
そのときにモデリングをしていると、設計要件と照らし合わせると、どうもうまくいかない……。「元の絵をSketchBookで変形してみました」なんてときにもすぐに、Fusionの中に取り込んだスケッチにも変更が反映されるので、作業がしやすいのです。
さらに、レンダリングツールとの連携があります。例えば、形状を変更すると同時に、すぐにレンダリングのイメージも変更して、ほぼリアルタイムで確認するというケースです。
最近のCADにレンダリングツールが付属しているというケースも増えてきましたが、やっぱり専用ツールでやった方がよいことは否めないと思います。
例えば「Autodesk Showcase」でレンダリングする場合、Fusionと連動すれば、(Inventorに限らない)3次元CADで作業しながら検討が素早くできる、てなことのようですね。
解析ツールにも使おう
「検討の際の形状変更を容易に」ということで、忘れてはならないのが、解析が目的の場合です。
「解析に必要のないフィレットや穴を削除する」「設計検証のために、さまざまな形状オプションを検討する」といったときに、「この人は解析担当ですが、3次元CADの操作はあまり得意ではありません」というシナリオがよく語られます。
そんなときに、まずFusionに3次元データをインポートし、検討したいさまざまな形状オプションを作成しておいて、さらに「Autodesk Simulation」のような解析ツールに3次元データをエクスポートする、というやり方ができます。
もっとも、設計が主で3次元CADが得意な人であっても、「簡単に形状をいじれる」なら、それに越したことはないと思うでしょうが……。
ソフトの立ち位置やメッセージに着目すれば、違いが見えるか
このままいくと取り留めもなくいきそうなので、そろそろ「水野的に」まとめていきます。その際は、やっぱり「Fusionの立ち位置」を語った方がよさそうです。というのも、上で紹介したようなシナリオだけでは、多少のやり方の違いはあっても、「どれも、便利に活用できますよ」という話にまとまってしまいそうなので……。
「クロスレビューをするとかは考えていません」と前回も言いましたが、「あくまで水野の理解」ということで、比較した上での違いについて、軽く示した方がよさそうだと考えました。
前回紹介したシンクロナス・テクノロジは、Solid Edge(またはNX)の機能の一部であり、従来の履歴のフィーチャも、シンクロナスフィーチャも、1つのCADデータの中に保存されているといった感じです。
一方Fusionは、もっと独立した位置付けになっています。そのことによって、単に「ダイレクトな操作ができます」というよりは、開発の中で発生するプロセスの断絶の中でも、特に「形状操作にまつわるもの」を解消しようという意図が感じられました。
「Fusionのようなダイレクトな操作が必要とされるソフトウェアは、普通、Inventorのような3次元CADでしょう」と考えがちです。でも、よく考えたら、3次元CADは使わないけれども、3次元データを別のソフトで扱う層は存在するわけです。
そうすると、「オートデスクのさまざまなツールと一緒に使えること」の意味が見えてくるようなのです。
シンクロナス・テクノロジの場合には、あくまでも「Solid Edge上でのダイレクトな編集」ということですが、Fusionの場合、「あるソフトからデータをもらい、それをFusionで編集し、本来の目的のソフトへデータを送る」ということです。ただ単に、その過程の操作だけを見てしまうと、何となく、どちらも同じに見えてしまうのかもしれません。
Fusionを試す方法
先ほども説明したように、Fusionはオートデスクの主要なソフトに同梱されています。同梱製品のユーザーでなくても、使用期限は設定されていますが、「Autodesk Labs」から無償のテクノロジープレビューが提供されています。
そしてWindow版だけではなくて、Mac OS版もあります。これ以上、水野が紹介するよりは、「百聞は一見にしかず」ということで、実際に使って試してみるのが一番ではないかと思います。
水野もMac OS版を試しました。白のユニボディーの普通のMacBookですが、さくさく動いて、迷いなく使えます。結構、いいかもしれません。Windowsの64ビット版も、取りあえず手元のマシンで順調に動きます。私はしばらく、これで遊んでみようかと思います(笑)。
ということで、今回もお付き合いいただきましてありがとうございました。さて、次のCADは何でしょうか? 何だか想像が付いてしまいそうな気もしますが……。ではでは。
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