小型化した11代目カローラ、燃費と走行性能は改良エンジンと新型CVTで向上:新型カローラ(2/2 ページ)
トヨタ自動車の新型「カローラ」は、11代目にして初となる小型化や、セントラル自動車宮城工場での生産などが話題になっている。しかし、燃費と走行性能を向上させている、改良エンジンと新型CVTにも注目すべきだろう。
“トップクラス”から“クラストップ”に
新型カローラは、11代目にして初となる小型化や、セントラル自動車宮城工場での生産などが話題になっている。大衆車であるカローラは、高級車ブランドの「レクサス」などと比べて新技術の採用が少ないと見られがちだ。
しかし、エンジンやトランスミッションなどで構成されるパワートレインは、車両価格を圧迫しないようにバランスを取りながらも、大幅な改良を施している。新型カローラのパワートレイン開発における燃費目標は、「アイドルストップシステムを搭載しない場合のJC08モードで、10代目カローラの10・15モード燃費と同じ20km/l」(トヨタ自動車の説明員)だったという。一般的にJC08モード燃費は10・15モード燃費よりも2km/lほど数値が小さくなることを考えれば、実際には2km/lもの燃費向上が必要になるわけだ。
燃費向上を目的としたエンジン開発では、排気量を下げたり、気筒数を減らしたりする「ダウンサイジング」という手法を採用するのが一般的だ。しかし、新型カローラの主力エンジンは、10代目カローラと同じ排気量1.5lの「1NZ-FE」である(アクシオとフィールダーの計28車種のうち23車種に搭載されている)。「エンジンをダウンサイジングすると加速などの走行性能が変化してしまい、既存のカローラオーナーが新型カローラに買い替える際に違和感を覚える原因になる。そこで、エンジン排気量を1.5lのまま変更せずに、燃費を向上するための開発に取り組んだ」(同説明員)という。
そこでまず、圧縮比を従来の10.5:1から11:1に高めた。圧縮比を高めると発生しやすくなるノッキングに対しては、EGR(排気ガス再循環装置)の冷却能力を高めることで対応した。EGRについてはインテークマニホールドも改良したという。また、エンジンベルトの張力をばねで自動的に調整する機構を導入して摩擦損失を低減した。これらの改良によってエンジン燃費を5%高めた。「10代目の燃費は“トップクラス”だったが、11代目は“クラストップ”を達成できた」(同説明員)。
新型CVTと併せて他車種にも展開
CVTは、構成部品を全面的に変更した新型の「Super CVT-i」を採用した。特徴は4つある。1つ目は、加速時におけるトルクコンバータの接続を、滑らせながら徐々に行う「フレックススタート」に対応したことだ。減速時におけるトルクコンバータの分離も同様のことが行える。2つ目の特徴としては、変速比幅を従来の5.8から6.3に広げた。フレックススタートと変速比幅の拡大は、燃費の向上のみならず、走行性能の向上にも役立っている。
3つ目は、ポンプからのオイルの吐出を、高圧と低圧、2つの吐出ポートに分けて行えるようにしたことだ。高圧のオイルをプ―リーやクラッチの動作に、低圧のオイルをギアの潤滑に用いることで、ポンプの損失を低減している。「2個のポンプを使って高圧と低圧のオイルを吐出する技術は既に採用されているが、新型CVTでは1個のポンプから高圧と低圧のオイルを吐出できるような部品を採用することで対応した」(トヨタ自動車の説明員)という。4つ目は、従来よりも低粘度のオイルの採用が挙げられる。これらの特徴により、従来よりも損失を2%低減した。
この新型CVTは、パッケージと内部の軸間距離が既存のCVTと同じである。このため、既存のCVTと同じラインを使って混流生産することができるという。同説明員は、「製造ラインを増やさずに、既存モデルから新型モデルに移行できる。このため、CVTのサプライヤは製造コストを抑えながら、新しい部品を製造できるようになる。この新型CVTは、排気量1.5lと1.8lのエンジンを搭載する他の車種にも展開する予定だ」と述べている。
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