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「勾配」と「テーパ」の違い、ちゃんと分かってる?金型設計屋2代目が教える 「量産設計の基本」(2)(2/2 ページ)

設計する製品には角度を付けなければ、金型からうまく抜けない。そんな角度の表現にもいろいろあるけれど、その違い、分かっていますか?

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 答えはA。先の方が細ければ抜きやすいのは当然ですし、逆にBのように先の方が太くなっていれば剣を抜くことはできません。

 この剣を製品、石を金型とします。製品(剣)形状の中に、通常の金型(石)の動きでは取り出せない形状(先が太くなっている剣先)があったとします。このような形状のことをアンダーカットといいます。

 以下に、アンダーカットの形状の具体例を挙げます。

  1. 製品の横に穴が開いている
  2. 製品に突起がある
  3. 製品の裏側にフランジ(棚のような形状)がある

アンダーカットの形状

 このようなアンダーカット形状は、金型が開くとき、あるいは製品を突き出すときに、その部分が引っ掛かってしまい、通常の型開きでは製品を取り出すことができません。そのためアンダーカットを解消するために「スライドコア」や「傾斜コア」などとと呼ばれる別の機構を設定し処理する必要があります。

 「別の機構を設定する」というのは、ひと手間増えることを意味します。当然コストは増えますし、手間を掛ける以上は不具合が発生する確率も高まります。製品の機構上必要がないのであれば、アンダーカットのある形状はできる限り避けたいところです。


アンダーカットの解消

パーティングラインとは

 たい焼きを焼くときは2枚の鉄板を重ね合わせて焼き上げます。金型もそれと同じことで、大別すると2枚の板に分けることができます。この2枚の板を一般的に固定側と可動側といいます(実際に金型を構成する板は2枚ではないですが、ここでは便宜上2枚とします)。そして、この可動側と固定側の分割される位置を「パーティングライン(PL)」といいます。

 このパーティングラインはどこに設定してもよいわけではなく、製品を金型平面で見たときに一番外側になる部分に設定します。それ以外の位置に設定した場合には前述したアンダーカットが発生しますので、別途アンダーカットに対して処理が必要になります。

 パーティングラインに当たる部分は、可動側と固定側がしっかりと合わさっていなければなりません。この合わせが不十分ですと、「バリ」という不具合が発生します。

 バリというのはたい焼きでも確認できます。写真のたい焼き、鯛の部分以外にも生地がはみ出ていてちょっとお得な感じがします。


たい焼き:はみ出たところも、おいしいです。

 このはみ出た生地が、バリに相当します。

 たい焼きではお得感満載なバリですが、プラスチックの製品でこんな風にバリが発生していたら明らかに不良品ですよね……。

 ここまでのバリは大げさにしても、パーティングラインをしっかりと合わせておかなければ、バリが発生して製品の不具合となってしまいます(ちなみに、固定側と可動側という別の板を合わせている関係で、バリが出ないまでも合わせた位置にうっすらとライン上に跡は残ります)。

 このような不具合を出さないためにも、製品設計の段階でパーティングラインの変化をできる限り緩やかに設定する必要があります。



 さて、3回目となる次回は製品設計の最終回になります。さらに深い部分に触れたいと思います。(次回へ続く

Profile

落合 孝明(おちあい たかあき)

1973年生まれ。2010年に株式会社モールドテック代表取締役に就任(2代目)。現在、本業の樹脂およびダイカスト金型設計を軸に、中小企業の連携による業務の拡大を模索中。「全日本製造業コマ大戦」の行司も務める。また、東日本大震災をうけ、製造業的復興支援プロジェクトを発足。「製造業だからできる支援」を微力ながら行っている。



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