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「勾配」と「テーパ」の違い、ちゃんと分かってる?金型設計屋2代目が教える 「量産設計の基本」(2)(1/2 ページ)

設計する製品には角度を付けなければ、金型からうまく抜けない。そんな角度の表現にもいろいろあるけれど、その違い、分かっていますか?

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 前回は「モノの量産には金型が必要である」という大前提でその材料の選定、発生する主な不具合について書きました。今回は、もう少し深く製品設計に必要な部分を見ていきましょう。

 製品設計の段階で金型のことがある程度考慮されていると、相当な時間の節約、コスト削減につながります。ですので、今回の内容は、製品設計者の皆さんにはぜひとも知っておいていただきたいのです。

 まずは、金型における製品部分の動きを見てみます(オレンジの部分が樹脂です)。

  1. 金型が閉じている状態です
  2. 金型に樹脂を射出します
  3. 樹脂を冷却固化した後、金型が開きます
  4. 金型から製品が突出され、製品を取り出します

図1 金型から製品を取り出すまでの工程

 上記のような工程で金型から製品を取り出します。金型で製品を作る際には「抜き勾配」が必要になります。

 抜き勾配とは、製品を金型からスムーズに取り出すためにその製品自体に付けた傾斜のことを言います。

 身近な物でいうと、水を入れる「バケツ」。このバケツを横から見ると口の方が広く、底の方が狭くなっており、角度が付いています。この角度が抜き勾配です。


バケツと抜き勾配

 抜き勾配のない状態で金型から製品を取り出そうとすると、金型と製品がこすれて製品に傷が付いてしまい、結果として製品の不具合を生じることになります。勾配を付けることで、金型と製品がこすれることはなくなり、良品を取り出すことができます。


抜き勾配の役割

 抜き勾配について、“角度が幾つであればよい”ということは一概には言えませんが、一般的には1°以上の勾配が必要になります。身の回りのプラスチック製品をよーーーっく見てみると、ほとんどの物に勾配が付いていることが確認できるはずです。この記事をPCで見ている方ならば、キーボードのキーが台形をしているのがすぐに確認できるかと思います。その台形の角度が抜き勾配というわけです。

 このように金型で良品を取るためには、抜き勾配を付けることが重要なポイントとなります(もちろん例外もありますが、取りあえずここでは置いておきます)。

 ちなみに、角度を表現する言葉には「勾配」と「テーパ」の2種類あります。「勾配」とは、水平面に対する傾きの度合い、「テーパ」とは、旋盤などにより、円すい状に加工した状態をいいます。

 ちょっと分かりにくいので、もっとざっくばらんな表現すると、製品が左右対称のときに中心に対して、≪片側の角度が「勾配」、両側を合計した角度が「テーパ」となります。間違えてしまうと、2倍(あるいは2分の1倍)の角度で製品ができてしまいますので表現には注意が必要です(実際に筆者も間違えた経験があるのはココだけの話です……)。


勾配とテーパ

ちょっと考えてみよう

 唐突ですが問題です。石にAとB2本の剣が刺さっていたとします。柄の部分は2本とも同じ形をしています。しかし、実は石に刺さっている刃の部分の形状が違います。Aの方が剣先に行くにつれて刃が細くなっており、Bの方は逆に太くなっています。さて、どちらの剣が抜けるでしょうか?


どちらが抜けますか?

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