鍛え上げられた家庭用蓄電システム、価格だけではないNECの工夫:スマートグリッド(2/2 ページ)
NECが大容量の家庭用蓄電システム市場に一石を投じた。kWh当たりの単価が30円を下回る製品を住宅メーカー向けに発売、停電対応や太陽光発電システムとの連携も可能だ。IT企業らしく、クラウドを使った異常検知システムも組み込んだ。
停電時に自動切り替え
蓄電システムは戸外と連携していなくても役に立つ。しかし、メンテナンスや運転モードの設定などを考慮すると、通信機能が備わっていた方がよい。
旧製品も無線通信機能を搭載しており、システムの稼働状況・利用状況をリモートで把握できるような仕組みを備えていた。ただし、バックエンドは住宅メーカーなどが用意しなければならなかった。
今回はNECのデータセンターを使った常時接続のクラウド環境対応をうたう。電池の温度や、充放電の状態などを常時監視し、故障を検知できる。電力料金の改定があった場合も、蓄電システム側に変更を加える必要がない*3)。
*3) 毎月の電気料金や売電料金を計算し、操作パネルや別売のHEMS画面に表示するには料金テーブルが不可欠だ。ただし、料金テーブルを本体側に内蔵してしまうと、アップグレードの手間が増えてしまう。
家庭用蓄電システムを設置すると、どのように利用できるのだろうか。図3に、標準的なシステムレイアウトを示した。特徴的なのは、停電時に給電したい家電製品を決められることだ。蓄電システムには、一般負荷用電源ライン(図3の青線)と重要負荷電源ライン(図3の緑線)が内蔵されている。一般負荷電源ラインは、系統電力と接続されている。系統電力は蓄電池を充電するだけで、一般負荷電源ラインには蓄電池の電力は供給されていない。従って、停電時には電力の供給が止まる。
重要負荷電源ラインは系統電力に接続されていない。その代わり、停電時でも自動的に蓄電システムからの給電に切り替わる。一般負荷電源ラインと重要負荷電源ラインの切り分けは、家庭用蓄電システムを住宅に設置する際に、分電盤と併せて設計すればよい。
図3 家庭用蓄電システムのシステム構成 電力線は停電時に給電されない一般負荷電源ライン(青線)と、停電時に電力が送られる重要負荷電源ライン(緑線)に分かれており、別々の分電盤を使う。電池の充電状況や異常は通信ライン(赤点線)を経由してNECのクラウドに接続されている。出典:NEC
家庭用蓄電システムの動作モードは3種類ある。標準モードでは家庭内の電力負荷に追従して電池から電力を供給する。ピークカット運転も可能だ。PCなどを使い特別なユーザー設定画面を呼び出すことで、電池の使い方を変えることもできる。経済性を重視するなら深夜電力などで充電し、電池容量を使い切る設定を選択できる。停電に備えるなら25%を残しておく設定を選べる。
太陽光発電と同時に利用する場合には2つのモードを操作パネルで切り替えられる。発電した余剰電力を優先的に蓄電するグリーンモードと、積極的に売電する経済モードだ。
なお、NECが2011年8月に販売を始めた家庭用のHEMS(関連記事:「取り付け容易なHEMS、NECが販売」)との連携動作も可能だという。
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