思い描いた「コンセントの未来」、ソニー発の強力な技術を使いこなせるか:小寺信良のEnergy Future(16)(2/4 ページ)
ソニーが開発した「認証型コンセント」。前回はコンセントが家電を認識する仕組みを紹介した。今回は認証型コンセントを使うと何ができるのか、アプリケーション側から考えてみたい。他のさまざまな革新技術同様、大きな可能性を秘めると同時に、落とし穴もありそうだ。
人を見て電力を送る
むしろこの技術は、「認証しなければ電気を流さない」というところにメリットがある。例えば日本では、駅や空港などの公共施設にあるコンセントから勝手に充電すると、「盗電」となる。しかし実際には、コンセントを挿せば誰でも使えてしまう現状がある。これを認証型にすることで、特定の設備しか動かないコンセントに変えることができる。
あるいは特定の人だけ、ということも応用すれば可能だ。実は非接触型認証コンセントの場合は、アンテナがコンセント口にあるので、FeliCaカードをコンセントのところに当てても認証する(図2)。カードで認証させたあと、一定の時間だけ電気を流すということもできるわけだ。
現在、社員証や入館証にFeliCaチップを内蔵させ、カードをタッチしてドアやゲートを開けるといったセキュリティシステムを採用しているところも多い。官公庁などもそうなってきている。あれはカードによって、人を認証していると考えてよい。これと同じ理屈である。
また、機器を認証しないと電気を流さないコンセントでは、乳幼児がコンセントに金属を差し込んだり、よだれまみれのぬれた手で触って感電したりするような事故も防げるだろう(図3)。
異物の差し込みはダミーのプラグを挿しておけば防げるという意見があるが、子どもは面白がってそういうものは抜いてしまう。またそのダミープラグが裏返って床に放置されると、端子が上に向かって突き立っているため、知らずにそれを踏んで大けがとなる可能性もある。ダミープラグはシンプルな仕組みであるが故に、まだ問題も多いのである。
機器に電気を流す前なのに機器認証できるのか、という疑問もあるだろう。だがFeliCaは、認証される側のICチップに電力が必要ない、パッシブ型認証システムである。皆さんの「Suica」や「Edy」は充電する必要がない。これと同じことで、コンセントから電気を流す前に認証できるのだ。これは電力線重畳方式*2)でも同じで、PLC(Power Line Communication、電力線通信)にはないメリットである。
*2) ソニーの認証型コンセントには2種類の方式がある。1つが、FeliCaチップのリーダー/ライターチップやマイコン、アンテナなどを仕込んだコンセントと、FeliCaチップだけを埋め込んだプラグを組み合わせて使う「FeliCaタイプ」だ。もう1つがコンセントやプラグではなく、分電盤や機器内部にリーダー/ライターチップやFeliCaチップを埋め込んだ「電力線重畳通信」である。詳しくは前回(3ページ目)を参照。
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