ソニーが始めた「コンセントの革命」、自動改札や電子マネーを実現した技術を生かす:小寺信良のEnergy Future(15)(3/4 ページ)
これまでは不可能だったコンセント単位の電力管理や認証ができるようになると、私たちの生活はどのように便利になるのか。今回はソニーが開発した「認証型コンセント」の仕組みを追いながら、コンセントが家電を「認識する」動きを見てみよう。
対応機器がない段階でどうする
ただし、FeliCaチップを埋め込んだ対応機器がすぐに増えるとは思えない。そこで、FeliCaチップ内蔵の「変換アダプター」を間に差し込むことで認証できるようにする(図4)。この仕組みだと何の機器がつながったかは分からないが、変換アダプターが挟まっていることで、電気を流してよいかどうかは判断できる(図5、図6)。
誰が所有しているアダプターなのか、というヒモ付けをすることで、利用者も分かる。まあ貸し借りできるものなので、それほど厳密な仕組みではないが。
アダプター方式にも幾つか弱点がある。例えば上下2口のコンセントがあった場合、上と下を厳密に区別できるのだろうか。いかんせん電波で認識するので、上下が近い場合に誤認識しないよう、一工夫必要だ。
もう1つ、世界には少なく数えても形状やプラグの端子数が異なる10種類以上のコンセントがある。全ての種類にうまくアンテナを入れ込むようなスペースがあるのか、という問題もある。旅行者は世界対応の変換プラグを利用することになるだろうが、そういうものにも全部にアンテナを入れて、しかもそれを合体ロボみたいに組み合わせてしまってちゃんと動くのか、という懸念もある。
無線を使わないコンセントの利点とは
今回発表された認証技術には、FeliCa技術をそのまま使った無線方式の他に、もう1つソニー独自の新方式がある。それが「電力線重畳通信」だ(図7)。非接触型のFeliCaシステムを、あえて接触型にしたものである。
構造としては、非接触型で使っていたリーダー/ライターチップのアンテナを取っ払って、その代わりに直接電力線に接続したような格好だ。もちろん各チップの動作には100Vも必要ないので、過剰に電力が流れてこないようにフィルタリングする。この技術のポイントは、これまで無線でやりとりしていた信号を、電力線にモジュレーション(変調)して載せるというところにある。
この方式では、コンセント口やプラグ部分に加工するのではなく、もっと奥に認証のためのチップを仕込める。例えば分電盤の前などに1つ組み込めばいい。機器側もプラグの先端ではなく奥の電源部分にICチップを組み込む。
この方式のメリットは、有線による通信になるので、非接触型の2cmや10cmといった世界ではなく、数十mまで認証範囲を伸ばすことができるところにある。屋内配線はほとんど大丈夫だろうし、間に「電源ドラムを挟んでケーブルを30m延長しました」という状況でも使える。またアンテナが不要なので、部材が節約できて安くなる他、コンセント口1個1個にリーダー/ライターチップを付けなくてよいので、工事が一発で済むなどのメリットもある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.