原子力大国ウクライナはどこに向かうのか:世界の再生可能エネルギー(4)(2/2 ページ)
東欧の大国ウクライナは、原子力発電への依存度が約5割に達する。今後さらに依存度を高めていく計画だ。一方、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)にも力を入れており、風力発電や太陽光発電の普及を目指す。
欧州最大のメガソーラーが完成
このような状況を受け、ウクライナ国内に次々とメガソーラーが完成している。
オーストリアActiv Solarは、2011年12月28日、ウクライナのPerovo太陽光発電所(Perovo Solar Power Station)を完成、試運転を開始したと発表した*6)。発電所の出力は100MW*7)、同社によれば欧州最大であるという(図2)。年間発電量は13万2500MWh(1億3250kWh)を予定する。CO2(二酸化炭素)排出量削減に換算すると、年間10万5000トンに相当する。
*6) 同社は、5段階に分けて同太陽光発電所を建設しており、2011年12月に第5段階(出力20MW)を完成させた。
*7) 隣接するクリミア自治共和国の首都シンフェロポリ(人口34万人)のピーク電力負荷に耐えられるという。
図2 Perovo Solar Power Station 出力100MWを実現するため、結晶Si(シリコン)太陽電池モジュールを44万枚設置した。接続ケーブルの総延長だけでも1500kmに達する。発電所の敷地面積は200ha。太陽電池モジュールやインバーターは西欧企業やアジア企業の製品を輸入して利用した。出典:Activ Solar
Activ Solarの創立者であるCEOのカベー・エルテファイ(Kaveh Ertefai)氏によれば、Perovo太陽光発電所は同社の太陽光プロジェクトのうちで最大のものであるという。同社は2011年2月にRodnikovoye Solar Power Station(クリミア半島、出力7.5MW)、続いて、2011年10月にOkhotnykovo Solar Power Station(クリミア半島、出力80MW、図3)を完成させたばかりだ。
図3 Ohotnikovo Solar Power Station 結晶Si太陽電池モジュールを34万7800枚設置した。20MWずつ設置したという。敷地面積は160ha。出典:Activ Solar
Perovo太陽光発電所の工事は2011年7月に始まり、8月には最初の20MWの設置を完了、わずか半年で100MWという巨大なメガソーラーを完工したことになる。建設には800人が従事した。建設資金は約3億ユーロ。2つのロシアの銀行、すなわちVTB Bank OJSCとSberbankが融資した。
同社はウクライナにおけるメガソーラー設置をさらに進めようとしている。モルドバ共和国に近い100万都市オデッサが次の設置候補地だ。
Activ Solarの戦略は、ウクライナのFIT政策にうまく合致している。
同社はオーストリアの首都ウィーンに本社を置き、Si材料製造事業とメガソーラー事業を手掛ける。2008年に創業すると、ほぼ同時にウクライナの主要都市ザポリージェに本拠を置くPJSC Semiconductorを買収、Si製造産業に参入した。これはウクライナのFITの条件に国産原料や国産太陽電池モジュールの比率が含まれているためだと考えられる。
なお、PJSC Semiconductorは、1956年に半導体品質のTi(チタン)やGe(ゲルマニウム)の製造を始め、1964年に同じく多結晶Siの製造を開始した業界では老舗の企業。1990年代には世界の多結晶Siの製造に占めるシェアが2%に達した。Activ Solar傘下となった2008年にSi製造工場を一新、現在は原料ガスであるSiHCl3(トリクロロシラン)の他、単結晶Siや多結晶Si、エピタキシャル基板の生産を担っている。
次回は南太平洋の島国「トケラウ」を扱う。
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