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原子力大国ウクライナはどこに向かうのか世界の再生可能エネルギー(4)(1/2 ページ)

東欧の大国ウクライナは、原子力発電への依存度が約5割に達する。今後さらに依存度を高めていく計画だ。一方、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)にも力を入れており、風力発電や太陽光発電の普及を目指す。

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原子力大国ウクライナはどこに向かうのか
ロシア正教の大聖堂

 連載「世界の再生可能エネルギー」ではこれまで、中国、インド、米国の再生可能エネルギーに関する取り組みを紹介してきた。今回は東欧の大国ウクライナを取り上げよう。

 ウクライナの国土は広く、日本の1.6倍(60.4万km2)に達する。人口は日本の35%(4500万人)だが、面積、人口とも東欧ではロシアに次いでおり、東欧における地域大国だといえる(図1)。

 ウクライナはヨーロッパの穀倉地帯(麦類)としても知られる農業国で、石炭や金属鉱物資源にも恵まれている。石炭の生産量は世界シェア1.2%であり、世界第10位前後に位置する。ウラン鉱の生産量は世界第9位だ。


図1 ウクライナの位置 ウクライナ(オレンジ色)は、西のEU(欧州連合、空色)と東のロシア(灰白色)の間にはさまれている。南側は黒海に面する。国土の拡大図(左下図)では、ドニエプル川によって国土が東西に分かれていることが分かる。ドニエプル川沿いの北部国境近くに首都キエフ(黒星印)が位置する。黒海に突き出たクリミア半島はロシア系住民が約6割を占め、ウクライナの支配下にはあるものの独自の憲法を持つクリミア自治共和国の領域である。クリミア半島の南部、ヤルタから北へ30kmの位置にクリミア自治共和国の首都シンフェロポリ(黒点)が位置している。左下図の左下にある横棒は距離200kmを表している。

 ウクライナの電力は原子力発電と火力発電に強く依存している。ウクライナは世界第7位の原子力大国だ。稼働中の発電用原子炉は15基ある。2010年時点で総発電量の48.1%を原子力発電で賄っており、原子力発電は最大の電力源である。次いで4割強を火力発電が担い、水力発電の比率は5%にすぎない。このような構成は、ウクライナの地理条件を反映している。

 ウクライナ政府は原子力発電の比重をさらに高めようとしている。2006年には既存の9〜11基の原子炉を新型に交換する他、さらに11基を新設する政策を発表。2030年までに原子力による発電量を2倍に拡大する戦略を採った。

 しかし、ウクライナの原子力発電は伸び悩んでいる。例えば、2004年時点では原子力発電が総発電量に占める割合は51.1%と高かった。同期間の総発電量が10%以上成長しているのにもかかわらず、原子力が追い付いていない。なぜだろうか。

 環境分野の研究組織である米Worldwatch Instituteが発表した「THE WORLD NUCLEAR INDUSTRY STATUS REPORT 2010-2011: Nuclear Power in a Post-Fukushima World」*1)によれば、1986年に起こったチェルノブイリ原子力発電所4号炉の大事故が政策に影響を及ぼしているという。同発電所は首都キエフの北110kmに位置しており、事故の影響は大きかった。チェルノブイリ以外に建設中だった3基の炉がその後運転を開始したものの、当時ソ連邦の一員だったウクライナは、国内の原子力開発をいったん停止した経緯がある。

*1) ドラフト版をWorldwatch InstituteのWebサイトからダウンロードできる。

 1991年にチェルノブイリ2号炉で起こった大規模火災はあまり有名ではないが、原子力推進が停滞する原因になっている。なお、チェルノブイリ原子力発電所の全ての炉が運転を停止したのは2000年だ。

 福島第一原子力発電所の大事故以降も同国の原子力推進政策に変化はない。2011年4月19日に首都キエフで開催された「安全で革新的な原子力エネルギー利用に関するキエフ・サミット」でも推進の姿勢を変えていない。前年の2010年にはロシアと共同で原子炉開発に取り組むことを表明してもいる。ただし、後ほど触れるFIT政策の推進など、原子力以外の選択肢を無視していないというのが同国のスタンスだ。

 火力発電にも課題がある。ウクライナの火力発電は石炭と天然ガスが主力だ。だが、天然ガスに関して、ウクライナは近年、ロシアのエネルギー政策に振り回されている。ロシアは旧ソ連邦構成諸国に国際価格以下で天然ガスを供給してきた。ところが、ロシアは値上げを通告。2009年1月には価格交渉のもつれから、天然ガスの供給が停止してしまう。2010年4月にようやく価格引き下げ交渉に成功したという経緯がある。

再生可能エネルギー普及にアクセル

 原子力を増強し、火力を維持しようとしてきたウクライナ政府の政策は、2008年、変化を見せた。まずは風力だ。

 再生可能エネルギーに関する国際ネットワークであるREN21(Renewable Energy Policy Network for the 21st Century)によれば、欧州における風力発電のトレンドは2つある*2)。1つは洋上発電、もう1つは東欧である。REN21は東欧の例としてウクライナを取り上げている。固定価格買い取り制度(FIT)が2008年に施行*3)されたため、2010年時点で少なくとも10の風力発電プロジェクトが進行中だという。同国のFIT制度は2030年まで継続する。

*2) Renewables 2011 Global Status Report(2011年7月発行)

*3) 再生可能エネルギーの支援政策にはさまざまな形態があり得る。ウクライナの政策はFITに特化しており、RPS(Renewables Portfolio Standard)政策や政府機関による債務保証には取り組んでいない。

 REN21によれば、ウクライナの総発電量に占める再生可能エネルギーの比率は2009年時点で7.0%まで高まっている。

 太陽光発電の状況はどうなっているのだろうか。ウクライナ南部の年間平均太陽光入射量は約150W/m2(年間1400kWh/m2)である。これはスペイン北部や北海道東部に匹敵する強度だ。ウクライナ南部は乾燥したステップ気候で、降水量も少ない。晴天に恵まれやすいということだ。

 別の記事で取りあげた成功するメガソーラーの条件を振り返ってみよう。条件は3つあった。

  1. 日照が保証されていること(発電量の確保)
  2. 電力需要が大きく、伸びていること(需要の確保)
  3. FIT制度の完備(投資の不確実性を抑える)

 ウクライナは最初の条件を満たしている。ウクライナの原子力発電は計画通りに伸びておらず、火力にも頼り切れない。すなわち2番目の条件にもかなっている。3番目の条件はどうだろうか。

 日本産業機械工業会によれば、欧州の太陽光発電市場は、4種類に分類できるという*4)。すなわち、(1)現在大規模な導入が進んでいるドイツやスペイン、チェコ、(2)注目市場であるイタリアとチェコ*5)、(3)新市場であるブルガリアとスロベニア、ルーマニア、(4)近い将来の市場であるウクライナとトルコ、マケドニアである。

*4) 2010年7月にチェコで開催された「CEE Solar 2010」の講演に関する報告資料(中東欧における太陽光発電の現状(その2))。

*5) チェコは(1)と(2)の両方の分類に含まれている。

 東欧諸国は現在、FIT政策を広く取り入れている。ウクライナはFITの買い取り価格が465ユーロ/MWhであり、(3)や(4)に含まれる国の中で最も高額だ。欧州の平均値327ユーロ/MWhと比較しても40%高額だ。すなわち国策として太陽光発電を強く支持していることが分かる。メガソーラー輸出を検討している企業にとっても魅力的だろう。

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