価格性能比に優れた太陽電池とは:小寺信良のEnergy Future(11)(4/4 ページ)
太陽電池といえばSi(シリコン)を使ったもの。確かに生産量ではシリコン太陽電池が過半を占める。しかし、シリコンよりも安価で使いやすい太陽電池もある。その候補の1つがCIS薄膜太陽電池だ。ソーラーフロンティアにCISの魅力を聞いた。
スッキリしたデザイン以外のメリットとは
この製造工程の違いは、製品の見た目にも大きく現われている。結晶シリコン系が複数のセルを連結することですき間ができ、モザイク模様になることと比べると、CISは黒一色の1枚板で、見た目もすっきりしている。デザインのよさから、家庭用で選ばれる例も多いという(図7)。
さらに製造プロセスでのメリットもある。結晶シリコン系に比べて製造工程が短いことだ(図8)。工程を拾っていけば約3分の2で済むことから、製造コスト面でも量産効果によるメリットが出やすい。さらに結晶シリコン系は、インゴットを形成する前に結晶化工程で、どうしてもある程度の時間と電力が必要になるという難点がある。
変換効率は何を意味するのか
CISのモジュールの変換効率は、結晶シリコン系よりもずいぶん効率が悪く見える。現在ソーラーフロンティアのCIS主力モデルでは12.6%、チャンピオンモデルで13%を超える程度である。
ソーラーフロンティアによれば、実は現在の出力測定法では、CISの本当の実力がうまく測定できないという。JIS規格で定められた測定方法は、決められた室内環境で一瞬だけキセノンランプなどを使って光を照射し、太陽電池の出力を測定している。
CISには「光照射効果」という現象が起きる。太陽光に照射されて数日たつと出力性能が上がるという現象だ。工場出荷時の測定結果よりも、10日以上照射を受けた段階での測定結果の方が、出力が向上することが分かっている。つまり公称最大出力150Wのパネルでは、実際には160Wぐらい出るということも起こり得る。年間発電量ではシリコン系に比べ10%程度多く発電したというデータもある(図9)。
現在はパネルの優劣を検査機関が測った変換効率で判断するというのが一般的だが、実際に現場に設置した状態で太陽光を当ての出力を見てみないと、正確な能力が分からないことになる。これは他社も条件は違えど、同じだろう。これをどのような比較パラメータで顧客に伝えていくかが、今の太陽電池業界全体が抱えている課題である。
筆者紹介
小寺信良(こでら のぶよし)
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
Twitterアカウントは@Nob_Kodera
近著:「USTREAMがメディアを変える」(ちくま新書)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- リニアと太陽電池の不思議な関係
リニアモーターカー実験線が太陽光発電所に変身 - 我が社の太陽光発電所を作るには
遠くの土地をうまく利用する手法とは - 国内最大規模の太陽電池工場がフル稼働へ
世界に負けない生産規模を誇る - 雪国でも太陽電池、新潟県で年間100万kWhを達成できた理由とは
温度依存性が低い太陽電池を使う