我が社の太陽光発電所を作るには:小寺信良のEnergy Future(6)(1/3 ページ)
企業が自家用の太陽光発電所を設けるとどのような利点があるのか、どのように建設すればよいのか、低価格化の工夫は何か、小寺信良氏が群馬県館林市の「館林ソーラーパーク」に迫った。
国際航業グループが群馬県館林市に太陽光発電施設「館林ソーラーパーク」(図1)を完成させたというので、現地で実際の施設を見学させていただいた。幹線道路から細い道を少し奥に入った、住宅地の間に作られた、小型の太陽光発電所である。
きれいに整地された長方形の土地は、ほぼ10年間手つかずのいわゆる民間遊休地であった場所で、草ボウボウの工場跡地だった。面積はおよそ7500m2。建て売り住宅なら数十軒ほどは建つぐらいの広さである。住宅地として考えれば広いが、発電所として見れば破格に小さい。
事業主の国際航業グループの前身である国際航業は、空港の土地や施設といった資産を管理運用する不動産業を目的として1947年に設立された、古い会社である。その後、航空写真測量事業を立ち上げ、地理情報システム事業を展開、官公庁や地方公共団体向けに防災や国土保全、行政業務支援などのコンサルティングを進めている。2008年、その不動産業とコンサルティング事業をベースに、太陽光発電事業に参入した。
ヨーロッパでは同社傘下のGEOSOLグループが、ドイツやスペイン、イタリア、チェコでメガソーラー発電所の開発と運営を手掛け、国内では宮崎県都農町にある「宮崎ソーラーウェイ」の建設を手掛けた。
宮崎ソーラーウェイは、宮崎県の海岸沿いに走る、ほぼ直線で全長約7kmのリニアモーターカー実験用の高架線路の上に、太陽電池モジュールを配置したものである。
宮崎県人にとってこのリニアモーターカーの実験は、思い出深いものである。実験は1977年に開始されたが、当時中学生であった筆者も、宮崎県を南北に走る国道10号線からこの高架をよく見た。初期の実験では安全性の確認のためにカエルを乗せて走行させたが、着いてみるとカエルが気絶していたというニュースを見た記憶がある。そのため筆者の中では、リニアモーターカーと言えばカエルの安否を気遣うもの、という条件反射が身についてしまった。
話が脱線したが、現在この宮崎実験線はその役目を終え、廃線となっていたものだ。ここで使用されている太陽電池モジュールは3種類あり、1つはこれも地元宮崎に工場があるソーラーフロンティア製だという。
話を館林に戻そう。群馬県館林市は、群馬県の東南、埼玉県と栃木県に挟まれた位置にある。近くには例年夏の暑さで驚きの記録を更新する熊谷市があり、地勢としては同様の低台地と言っていいだろう。館林市も猛暑のまちとして知られており、2010年には猛暑日の年間日数で国内最多の41日を記録している。
立地の良さから、食品関連の大手企業が集中しているが、この夏の計画停電で生産工場が大きな痛手を被った。これだけの猛暑が続く土地柄であることから、大規模施設のエアコンの電力消費も大きい。これら大手企業からは、今後の電力不足に備えて、自治体と共同で独自の発電装置を開発しないかという話もあるという。
猛暑のまちということは、それだけ日照時間も長いというわけで、太陽光発電には有利である。そのタイミングで国際航業グループの太陽光発電施設が完成したことは、館林市としても大いに参考になるところだろう。
なぜ太陽光発電所を作ったのか
館林ソーラーパークの目的は、ここで発電した電力を国際航業グループの事業所(東京府中市)に送ることである。しかしこの発電施設の設置・運用には、さまざまな新しいトライアルが含まれている。どちらかといえば、社会実験的な要素の強い施設のように感じた。
ご存じのようにこの夏は、東北電力と東京電力管内の電力大口需要者に対して、15%の節電義務が生じた。多くの企業はピーク需要時の操業停止、あるいは操業時間や曜日のピークシフトによってこれを達成したが、再生可能エネルギーである程度の自社発電ができれば、節電義務対象外となる。国際航業グループは館林ソーラーパークの発電により、ピーク需要時の約半分をまかなうことで、節電義務対象外の事業者となった。夏の電気需要ピークは、ちょうど太陽光発電による発電出力のピークと重なるため、都合がよいわけである。
実際には、ここで発電した電気がダイレクトに府中まで送られるわけではない。そもそも自前で送電線が引けるわけでもないし、送電線を借りたとしても距離が長ければ、相当高圧で送らない限り送電ロスが大きくなる。そこでいったん館林で発電したものを電力会社(特定規模電気事業者)に供給し、同じ量を府中で取り出す、託送供給方式を採っている。つまり電気を館林と府中で、とりかえっこしているわけである。
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