機械材料の定尺を知らないで設計できるのか!:甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」(7)(3/3 ページ)
機械材料にも「定尺」がある。材料の「標準サイズ」を知らなくては、設計・製造はできない。
「定尺」は、「じょうしゃく」「ていじゃく」「ていしゃく」といういろいろな呼び方をしていますが、職人の世界では、「ていしゃく」が一般的です。
この定尺とは、「定尺寸法」のことです。例えば柱の場合ですが、定尺は3m、6mで、母屋や土台の場合は4m、梁や桁では、4m、5m、6mの定尺材が一般的に使われています。
話を元に戻しましょう。機械材料の場合は、ステンレス材、鋼材、アルミ材、銅材などの素材を製造する会社と、商社や問屋で定尺寸法を決めています。しかし、取り決めにより定尺長さは、バラバラなのが難点です。だからいって、何も知らない方がもっと困ります。
★目利き力ポイント!:機械材料には、「定尺」がある。材料の「標準サイズ」を知らなくて、設計、製造はできない。
建築材料の「標準サイズ」を知らないと大工にはなれないとのことです。さらに、企業では競争に勝ち抜くための低コスト化を狙って「集中購買」という活動をしています。材料の「標準化」のことです。
図5は、ある日本企業の事例です。
自社で使用する材料の材質とサイズを制限し、「集中購買」や「大量納入」による材料の量産効果を期待しているのです。
企業規模によらず、「標準材料選択表」がない企業は相当やばいぞ! 低コスト化の意識が全くないという証だ!
げっ! 甚さん! 本当ですか? うちの会社にはありませんけど。どっ、どうしたらいいんですか?
さっさと転職しろ!
甚さん、冗談ですよね?
もしあなたの企業に「標準材料選択表」がない場合、それは大事件ですが、数人集めて、定時後の17〜19時で活動しましょう。3カ月もあれば、70点の「標準材料選択表」が完成します。「ないから転職」なんて、それはあまりにもイージーですよ……。
おっといけねぇ。「標準サイズ」「材料メーカー」のキーワードで重要なことを思い出したよ。それはなぁ……。
甚さん! なんですか? なんですか? 早く教えてください。
いままでに登場した「ステンレス板金」「鋼板」「厚板鋼板」「銅板金」、そして最後の「板ばね用板金」の全てが「圧延方向」という特性をもっています。
なんだ、「圧延方向」ぐらい知っていますよ。なんてったって、富士山麓大学の院卒、しかも、主席で卒業ですから。何なら、僕が解説しましょうか? エヘン! 例えば、身近なトイレットペーパーに例えましょう。図6のトイレットペーパーをロール方向(板金の圧延方向に相当)、つまり、図中のX方向へちぎるときれいに切れます。しかし、ロール方向と垂直の方向、つまり、Y方向にちぎろうとしてもギザギザになってしまいます。ですから、ミシン目が付いているのです。エヘン!
板金も全く同じです。
トイレットペーパーの「ロール方向」の代わりに、専門用語で「圧延方向」と呼ぶ特性が存在します。
それでは、図6の下にある板金の図を見てみましょう。
この板金部品の「圧延方向」は、図示する方向と仮定します。このとき、圧延方向と同方向Xに曲げた「曲げ部X」の根元は、破損しにくく、圧延方向と直角方向Yに曲げた「曲げ部Y」の根元は破損しやすくなっています。
冒頭で、全ての板金が「圧延方向」を有すると記述しましたが、全ての板金に関して、圧延方向との直角曲げが破損するわけではありません。特に、「ばね用板金」のみ気をつけましょう。
次回はよぉ、13項目ある「目利き力」のうち、最も重要な「引張り強さ、降伏点、疲れ強さ、0.2%耐力、ばね限界値」を伝授するぜぃ!
なんだ、それなら僕に任せてくださいよ。なんてたって、富士山麓大学の院卒、しかも、主席で卒業ですから。なんなら、僕が解説しましょうか? エヘン!
それは本当か? よく見ろ!
あれっ? 「0.2%耐力、ばね限界値」、……しっ、知りません!
次回をお楽しみに!(次回に続く)
Profile
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会 幹事、埼玉県技術士会 幹事。日本設計工学会 会員。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。Webでは「システム工学設計法講座」を公開。著書に「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)がある。
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