無線LANソリューションでInternet of Things時代の勝者となるか!?:組み込み企業最前線 − ユビキタス −(2/2 ページ)
軽量な組み込みソフトウェア製品を数多く手掛けるユビキタス。現在、スマートフォンを中心とした無線LAN対応機器の普及を追い風に、組み込み機器向けの無線LANソリューションを軸とした新たな事業展開を推し進める。
コスト面や低消費電力ではBluetoothに軍配が上がるが、AIR NOEのメリットは直接インターネットにつながり、インターネットへ中継するアクセスポイントのような機器が不要な点にある。そのため、「利用用途や状況に応じては、AIR NOEの方が有利になる場面も多くあるだろう」と三原社長は話す。
AIR NOEの想定ターゲット機器は、ネットワークオーディオ、スピーカーといった音楽製品、デジカメ、白物家電、ヘルスケア製品だ。特に最後の2製品、白物家電とヘルスケア製品はもともと非力なCPUのマーケットであり、こうした環境でも「CPUを高度化せずに無線LAN化が可能になる」(同)としている。
また、無線LANのトレンドとして、他にも無線LAN内蔵SDカードが近年注目されている。
先行するEye-Fiに対して、「Flucard」も新たに登場。さらに東芝がSD Associationに対して規格化を提案しており、こうした分野にも同社は取り組んでいきたい考えだ。「Wi-Fi DirectとDLNAの技術を使うことで、無線LANカード内の画像をスマートフォンなどの無線LAN機器と共有できるようになる。これはもちろん、デジカメに無線LANを内蔵する場合でも同じメリットがある」(同)。
電力の見える化から組み込み機器によるクラウドサービスへ
同社はハードウェアメーカーではないが、無線LANを搭載した電源タップ「iRemoTap」の開発も行っている(関連記事)。
iRemoTapは、電源タップに無線LANモジュール「YCSCSA2SAA01」を搭載し、コンセントの口に接続された機器ごとの消費電力を測定して、その情報を無線LAN経由でインターネットにアップロードすることで「電力の見える化」を実現する。電源タップだけでインターネットに接続できるというだけでなく、無線LANモジュールを内蔵したことで、追加配線が全く必要ないという点もメリットといえる。また、「ネットワーク経由で電源をオンオフする」(同)といったことも可能だという。
iRemoTapの試作開発では「実際に動き出すまでに1カ月もかからなかった」(同)という。「ベースとなる電源タップに無線LAN機能を実際に組み込んでみたことで、AIR NOEの効果が格段に違うのが分かった」と長谷川氏。これまで無線LAN化していない製品を無線LAN化する際に、いきなり基板から設計・開発するのではなく、ありものをベースに「まず試してみることができる」(同)のもAIR NOEの有利な点だといえる。
その先にあるサービスプラットフォーム基盤への取り組み
こうした取り組みで同社が目指すのは、無線LANを搭載した組み込み機器の情報をインターネット経由で集約し、その情報を活用する「サービスプラットフォーム」の構築だ。
その第1弾として、同社はSassorと協業。今年度(2011年度)中にもiRemoTapを使った電力の見える化サービスを開始する予定だ(関連記事)。電源タップにある口ごとの消費電力が測定でき、それをクラウドサービスとしてグラフ化、数値の分析などが行えるようになる。これにより、例えば、ユーザーの電力使用量を監視することで、見守りサービスやホームセキュリティ分野にも応用できるし、電力使用量の傾向を分析して保守サービスに生かすことなどもできる。
こうしたサービスプラットフォームを活用することで、「データの横展開が可能となり、『いろいろなサービスが生まれ、広がっていく!』」と三原社長は同社のサービスプラットフォーム事業の可能性を力説する。
現在、無線LANの普及を加速させているのはスマートフォンだが、同社の製品自体は、それ以外の無線LAN化が進んでいない組み込み機器をターゲットとしている。同社は、これまで無線LAN対応できなかった機器がインターネットにつながり、それら機器から集まるデータがこれまで以上の価値を生み出す、そんな世界に期待する。
――Internet of Things(モノのインターネット)時代の到来。三原社長は「ようやくスマートフォン以外のモノもネットワークにつながるような時代になってきた。われわれのビジョンが、徐々に現実のものとして実現されていくのを日々実感している」と語る。
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