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極小から業務用まで幅を広げるソニーのバッテリー戦略小寺信良のEnergy Future(4)(3/3 ページ)

小寺信良氏の次世代エネルギー連載。今回は、ソニーエナジー・デバイスの新工場を訪れ、リチウムイオン電池の動向と同社の戦略を聞いた。

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一体型蓄電池のニーズ

 ソニーでは既に4月に、このタイプのリチウムイオンを使った蓄電モジュールを出荷しており、8月8日にはこれを内蔵した業務用一体型リチウムイオン蓄電池「ESSP-2000」を発表した。蓄電モジュールはそもそも組み込み用の部材でしかない。これに制御用コントローラ、DC/ACインバータ、AC/DCコンバータなどを加えたものがESSP-2000で、一般に市販される一つのアプリケーションである。

 これまでソニーでは、自社でこのような製品は作っていなかったが、自社が得意とする放送およびセキュリティ分野と協力して、参入していくという。

 本宮工場では、蓄電モジュール8台を接続した容量9.6kWhの試作システムで、玄関前に設置したソーラーパネルから充電し、デモルームの電力をまかなっていた。

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蓄電モジュール8台を接続した試作モデル
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コントローラ、インバータ、コンバータを備える
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試作機背面。直流で並列接続しているのが分かる

 一方製品版のESSP-2000は蓄電モジュール2台を使用し、最大で2.4kWhを蓄電する。一般的なオフィスで1人がデスク周りで使用する程度の電力であれば、半日程度は持つという。ACコンセントからの充電に対応しており、深夜電力で充電、昼間は備蓄電力で動かすことで、ピークシフトにも対応できる。

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蓄電製品となるESSP-2000
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パネルの表示例。表示はダミーで、製品版とは異なる
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同背面。モジュールを2基使用し、コンセントは6つ

 発売は9月だが、既にテレビ放送用の編集スタジオも導入を検討していると聞いている。編集スタジオの業務は一般と大きく違っており、ほぼ24時間体制で動いている。これまでは落雷などによる停電に備えて、電力会社と送電優先順位の高い契約を結んでいるところも多いが、地区単位での計画停電は除外されない。さらに緊急用自家発電施設まで備えているところはごく一部で、ほとんどのスタジオはUPSなどの用意もない。

 都内には大体100前後のスタジオがあり、小さな「マンション編集室」と呼ばれるようなところまで入れれば、大体300カ所ぐらいあるのではないか。こういうところも、新しい市場である。

 ESSP-2000はオープン価格だが、市場価格は200万円前後と言われている。一般的な家庭やオフィスには高価だが、放送設備として考えると安い。ただ現状の容量2.4kWh/最大負荷1000VAは、業務用途としては少な過ぎる。もっと多くのモジュールを搭載した製品の登場が待たれる。

筆者紹介

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小寺信良(こでら のぶよし)

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

Twitterアカウントは@Nob_Kodera

近著:「USTREAMがメディアを変える」(ちくま新書)



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