極小から業務用まで幅を広げるソニーのバッテリー戦略:小寺信良のEnergy Future(4)(2/3 ページ)
小寺信良氏の次世代エネルギー連載。今回は、ソニーエナジー・デバイスの新工場を訪れ、リチウムイオン電池の動向と同社の戦略を聞いた。
定置型蓄電市場の立ち上がり
その一方で、大型電池の市場も急速に立ち上がってきている。具体的には、電動アシスト付き自転車、EV(電気自動車)などだ。特にEUからは、電動バイクと電動アシスト付き自転車は大きな市場になりつつある。
ソニーはこれまでコンシューマ用小型製品向けの需要が中心であったが、近年はもっと大型の蓄電モジュールの商談が急増しているという。特に定置型蓄電モジュールは、電力不足による計画停電を契機に、国内でも関心が集まっている。
これらの動きを受けて、ソニーではリチウムイオンポリマーを使った大型蓄電モジュールの製品化に着手している。大体2015年前後の実用化を目指しているようだ。
しかし当面これら大型モジュールのニーズには、円筒形セルのリチウムイオン電池を使用する決断をしている。円筒形セルを使う理由はいくつかある。一つは、一気に大電力を出す必要がある時に、円筒形リチウムイオン電池の方が向いていることだ。
もう一つは、これまで円筒形リチウムイオン電池を使って来たパソコン市場が、もはや伸びなくなってきていることだ。パソコン用の円筒形バッテリーは、18650型と呼ばれる。直径18mm、長さ65mmサイズというのが、業界標準である。
大型モジュールには、このサイズのバッテリーを多数まとめて使用する。大容量が必要ならば、大きなバッテリーを作ればいいのではないかと思われるかもしれないが、もし事故があった場合のリスクが大きくなる。それよりも小型電池を一つ一つ管理し、問題がある電池は切り離すなどした方が、リスクが分散できるわけである。
ソニーではここに、正極材がオリビン型リン酸鉄を使ったリチウムイオンを投入する。オリビン型とは結晶構造のことで、8面体と4面体から成る非常に安定した骨格構造を持っている。結晶構造が壊れにくいということは、それだけ寿命が長いということになる。また酸素を放出しにくい素材のために、燃えにくいところもメリットだ。
現在ほとんどの定置型蓄電は、鉛蓄電池である。鉛蓄電池は車のバッテリーなどでも使用されており、低価格でこなれた製品だが、電池寿命が数年と短いことが上げられる。またサイズも大きい。
一方リチウムイオン電池は、充放電サイクル特性に優れており、鉛蓄電池の2〜3倍となる、約6000回の利用が可能だ。また電池寿命も長い。さらに急速充電が可能というメリットもある。
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