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空気抵抗をどうしても減らせない電気自動車 SIM-LEI(2)(1/2 ページ)

「燃費」の良いEVを設計するために、SIM-LEIは電気エネルギーから運動エネルギーに高い効率で変換できるインホイールモーターを採用した。しかし、それだけでは目標としていた1充電当たり300km走行は実現できない。自動車の空気抵抗を減らす車体デザインが必要だった。

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 EV(電気自動車)を実用化するには電池技術の改善や充電設備の普及が重要だという指摘が多い。現在のリチウムイオン二次電池のエネルギー密度は低く、ガソリン車並の走行距離は望むべくもないという前提に立った意見だ。電池のエネルギー密度を高めるか、小まめに充電できるようにならなければ普及は難しいという主張だ。

 しかし、電池の技術革新を待たなくても、ガソリン車並の走行距離を実現した電気自動車が存在する。SIM-Driveが開発した先行開発車「SIM-LEI(Leading Efficiency In-wheel motor)」は開発目標であった1充電当たりの走行距離を300km以上に伸ばすことに成功した。

空気抵抗が燃費を決める

 SIM-LEIは、電気エネルギーから運動エネルギーに高い効率で変換できるインホイールモーターを採用し、減速した際に無駄になる運動エネルギーを回生して充電できるパワー密度が高い二次電池を搭載した。課題は、EVに掛かる各種抵抗を最小化する車体デザインを作り上げることだったという。モーターや電池が長距離走行に適していても、空気抵抗が大きければ電力が無駄になってしまうからだ。

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図1 デザイン部ジェネラルマネージャーの畑山一郎氏 「SIM-LEIのデザインはスタート地点にある。ここからSIM-Driveのデザインがスタートする」という。

 「SIM-LEIのデザインチームには2つの結果を出すよう求められた。走行距離300km以上というコンセプトを実証することと、SIM-LEIならではの特長を見える化する『アイコニックデザイン』だ」(デザイン部ジェネラルマネージャーの畑山一郎氏、図1)。

 300km以上を走行するには、EVの形状を工夫してなんとか空気抵抗を引き下げなくてはならない。高速走行した場合、速度の二乗に比例して空気抵抗が増大する。空気抵抗は車速が一定の場合、前面投影面積×抵抗係数(Cd:Constant Drag)」で決まる。まず、前面投影面積を小さくし、Cd*1)も引き下げなければならない。

 Cd値の目標は意欲的だ「通常の乗用車のCd値は0.25〜0.37。300km以上を達成するにはCd値を0.15、悪くても0.19に引き下げなければならないというのが至上命題だった」(同氏)。

*1)Cd値は物体の形状で決まる。進行方向に水平で、前面が進行方向に垂直な立方体のCd値は1.05、球形は0.47、進行方向に水平な流線型なら0.04まで下がる。Cd値0.15は乗用車としては極端に小さい値である。例えば、Volkswagenが開発し、2011年に公開したPHV(プラグインハイブリッド車)のコンセプトカー「XL1」は燃費が111km/Lと優れているものの、Cd値は0.186である。大陸横断競技などに使われる1人乗りのソーラーカーではCd値が0.15を切るものがあるが、上下に極端につぶれた形状である。

シルエットを小さくする

 デザインを開始し、最初に取り組んだのが前面投影面積、つまり正面から見たときのシルエットをいかに小さくするかということだった。

 まず、車体の全幅を1600mmに抑え、次に、ドアの断面積を減らした。具体的には、側面からの衝突に耐えるためのドア部材の配置を変えた。通常ドアの内部に配置するサイドインパクトビームをドアの外側に出した(アウターサイドインパクトモールと呼ぶ)。これで前面投影面積は十分に下がったという(図2)。

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図2 SIM-LEIのドア形状 側面衝突時の強度を高めるサイドインパクトビームを、ドアの外側に追い出すことで、ドアの断面積を減らした。

Cd値が下がらない

 次の課題は、Cd値の削減だ。多数のデザイン案から、まず「Active Drive」と呼ぶ案(図3)を選んだ。ただし、この形状は完成車とは異なる。

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図3 風を切って走る車体のデザイン例 高速で走行する自動車のデザインとしては一般的な形状である。

 「エクステリアデザインを担当したチーフデザイナーの江本聞夫氏は、1/5スケールのクレイモデルを何度も作り直しながら、風洞に泊まり込みでテストを繰り返した。しかし、どうしてもCd値を0.24以下に下げられなかった」(畑山氏)からだ。

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