2.7兆円分の石油を節約できる電気自動車「SIM-LEI」の秘密:電気自動車 SIM-LEI(1)
電気自動車(EV)は電力会社が供給する電力を使って充電しなければ動かない。発電時には石油やLNG、石炭を使うのだから、結局のところEVを導入してもガソリン車と同じ問題を抱えるのではないのだろうか。
電気自動車(EV)は電力会社から供給された電力を使って充電しなければ動かない。このため、電力の需給に余裕が無くなり、節電が求められると立ち行かなくなるのではないだろうか。深夜に充電し、昼間に使う電力のピークシフトには役立つかもしれないが、トータルの石油消費量はガソリン車よりも増える可能性がある。このような質問に対し、EVの技術開発を行う企業SIM-Drive社長の清水浩氏ははっきりとEVの方が有望であることを示した。
蛍光灯2本分の電力(77Wh/km)で1kmを走行できる同社のEV「SIM-LEI」(図1)の性能を、ガソリン車の燃費に換算すると70km/Lにも相当する。1Lのガソリンを給油した従来のガソリン車よりも、同じ1Lを石油火力発電所で燃やして発電し、EVに充電した方が、より長い距離を走れることになる計算だ。
国内で消費される石油の1/3は、自動車用途である。このため、日本国内のガソリン車を全てSIM-LEIに置き換えたとすると、石油の消費量は27%減少する。原油の輸入代金に換算すると2.7兆円が浮く計算になる。
SIM-LEIのエネルギー利用効率の高さを示す例はもう1つある。SIM-LEIの車体寸法(4790mm×1600mm)と同じ大きさの太陽電池モジュールを例えば車庫の天井などに設置した場合を考えると、発電した電力で年間1万6000km走行できることになるという(一般的な住宅用太陽電池と東京などの年間日射量で計算)。これは、将来再生可能エネルギーが普及したとき、石油を使わずとも十分にEVが走行できることを意味する。
効率の高いモーターと車体設計で実現した
このようなEVを設計するには、電気エネルギーから運動エネルギーに高い効率で変換できる仕組みを作り込まなければならない。具体的にはどのようなモーターを採用するかで決まる。次に、減速した際に無駄になる運動エネルギーを電力に回生して二次電池に充電できなければならない。これはパワー密度が高い電池を搭載することで実現できる。最後にEVに掛かる各種抵抗を最小化し、車体を軽量化する必要がある。こうすればEVの消費電力を下げられるからだ。これはボディーとタイヤの設計で実現できる。
SIM-LEIではこの3つを、大きくインホイールモーターとSCiB電池、車両設計で実現した。
次回からは、SIM-LEIのデザインや駆動・制御系、ボディ、シャーシなど具体的な設計について紹介する。
関連記事
- 空気抵抗をどうしても減らせない
(2)走行距離を伸ばすために不可欠な努力 - 冷たいモーターが333km走行のカギ
(3)効率のよいモーターがあってこそ - 「乗り心地が最悪」という常識を打ち破る
(4)モーター内蔵タイヤは重く、路面の影響を受けやすくなるのか - 1回充電で333km走行可能、SIM-Driveが先行開発車を完成
100km/hの定速走行時でも305km走行
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.