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【解説3-3】円の欠けを補完せよ/試験の現実きゃどりる(12)

【問題3】にもう1つ! 見落としやすい形状が。気付きましたか? また最終回ということでCAD利用技術者試験をめぐる教育の現実について考えてみました

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 前回のきゃどりる(11)では、第9回で出題した問題で、見落としやすい形状に着目してもらいつつ、実際にモデリングしてもらいました。

 今回は、形状を仕上げていきます。記事後半、解説終了後に正解の3次元モデルデータがダウンロードできます。あともう少しだけ、説明にお付き合いください。


【問題3】

【問題3】のpdfファイルを表示

ここに気が付いたら、えらい!

 次は上部中央の丸い部分の凹みを作ります。この丸い部分は凹凸両方があります。ここに気付いた読者の方は読図力がかなりある方だと思いますよ!

 モデリング基準よりZ方向に+14mm行ったところにスケッチ平面を作り、φ70mmの円をスケッチしてカットします(図1)。


図1 φ70の円をカット

 このままだとφ70mmの円が削れた形になります。図面ではこの部分は正円になっているので、図1の円の欠けている部分を後から編集します。φ70mmの円を今度は押し出さなければなりません。直前に作ったZ方向+14mmに作った平面にφ70mmの円もしくは欠けている三日月形状の部分をスケッチして押し出します(図2)。


図2 ここが欠けているから……

 最後にR7のフィレットを2カ所に掛ければ完成です(図3)。


図3 問題3、完成!

いかに細部まで図面を読みとるか

 皆さんいかがでしたか? 筆者はこの問題を見て、あらためて「図面をいかに理解するか」「いかに細部まで図面を読み取るか」の重要性を再認識しました。これが仕事だったら、ちょっとしたミスでも金型を手直ししなければならなかったり、RP(ラピッドプロトタイピング)を何回もやり直したりなど、大変なことになります(以前筆者も随分とミスしましたが……)。

正解の3次元モデルデータは、以下からダウンロードできます。

3次元CAD利用技術者試験の現実

 取りあえず今回で、本連載は最終回となります。賛否両論あるかと思いますが、こんな作り方もあるのかと理解いただければ幸いです。

 この連載ではコンピュータソフトウェア協会主催「3次元CAD利用技術者試験」の試験問題を拝借し解説してきました。その内容やレベルが大体お分かりいただけたと思います。今回紹介したモデリング問題のほか、3次元モデルの表面積・距離計測、筆記などの問題もあります。

 さて、この試験ですが年々受験者も増えています。筆者も仕事柄、いろいろな方にお会いし、この試験についてさまざまな意見を聞く機会があるのですが、人それぞれ思うところがあり、どうしたものだろうかと返事に困ることが多々あります。

 「このレベルじゃ実務では使えない」という人もいる一方で、「これくらいできればうちの会社では何とかなる」という人もいます。また、スクールを運営する立場の人なら、「こんなレベルじゃうちでは教えられない」といいます。

 確かに、現場の設計事情により、この試験のレベルで対応できるところもあれば、対応できないところもあります。また現場でバリバリ3次元CADを使っている方はわざわざこの資格を取ろうとは思わないかもしれません。

 本来は、現状の試験に盛り込まれているレベルの知識と併せ、さまざまな製造業(主に設計現場)で必要な知識もたくさん覚えられるよう、その知識の一部が試験問題になっていることが望ましく、それが今後の試験運営の課題ではあるでしょう。

 ただし、初めてCADを経験する、またはその習得を今後の目標にしている場合、あるいは初心者でなくても自己啓発やスキル評価をしたい場合については、目標設定が重要で、習得した事柄の社会的認知(資格)もその指標となります。そういった意味では、この試験は有効です。

 またCADについて何も分からない状態で仕事に取り組むより、ある程度CADを経験している方が仕事の理解度も違ってきます。試験とは別途、設計・製造の知識を習得していけばいいでしょう(その方法が問題かもしれませんが)。

 人材を受け入れる企業においては、この試験の内容や、そのレベル、現状を理解・認知しておくことも大切ではないでしょうか。


CAD教育の問題

 高校や専門学校、大学、またPCスクール系でよく勘違いされているのが、CAD利用技術者試験の対策講座の在り方です。合格するために傾向や対策を講じているのはいいのですが、合格レベルぎりぎりの内容しか教えません。本来、試験というのは自分のスキル、レベルを判定するものです。背伸びしてぎりぎり合格するのでは、その後、自分の知識への自信の持ち方も変わってきてしまいます。

 また、PCスクールの卒業生が試験に合格し、そのままそこのスクールの講師になるというケースをよく聞きます。CADの操作……といっても単にコマンドの説明ばかりで、設計や製図の本質的なことは何も説明されないこともよくあります。受講生や生徒からの質問に対して、それは講座の内容に入っていないから、もしくは自分の専門外だから、などの理由で答えられないのは、本来、問題外のはず。

 逆に、元機械設計者の方で、設計・製図に精通したCADの講師もいます。こういう方に当たれば、ラッキーでしょう。しかし講師の立場からすれば、カバーできる分野が増えることで、今度は1人で抱える仕事量が増えてしまい、オーバーワークになってしまうといった問題もあるとのこと。スクールの人員・コスト削減もまた、その大きな原因の1つです。

 今後、特に専門学校やPCスクールでは、CADの講師の採用や育成方法、カリキュラムの作り方など見直されるべきですが、一筋縄ではいかないでしょう。

 少々批判的になってしまいましたが、今後の日本の製造業の底上げを願い、上記のような問題提起をしました。

 これから、多くの人がモノづくりに興味を持ち、そして携わっていただきたい。また多くの人に新しいアイデアを生んでいただきたい。そのための1つのツールが、CADです。今後も日本が成長し続け、伸びていくために、CADや設計・製造の教育にまつわるさまざまな問題が改善されていくことを願います。

 最後に、いままで「きゃどりる」を読んでくださった方、いろいろなご意見などをくださった方々、ありがとうございました。

編集部より

この記事は3次元CADのオペレーション初心者向けとして、社団法人コンピュータソフトウェア協会主催「3次元CAD利用技術者試験」(平成20年度前期に実施された1級問題)の出題内容と解法を紹介しています。

この記事で紹介する3次元モデリングの作業ステップは、実際の設計事情や加工方法を考慮していない場合がございます。また当然ながら、実際の設計においては作業の手数を減らすことが重要であるとは限りません。

記事で提示する解答だけが正しいとは限りません。複数の解答パターンがある場合もありますが、記事で紹介するのはあくまでその1つとお考えください。

あらかじめご了承いただければ幸いです。



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