特集
グローバル化を「当たり前」にするためのリコーの実践:モノづくり最前線レポート(23)(3/3 ページ)
グローバル化を支援する「7つのプラットフォーム」と、リコーが取り組んできたグローバル化の方策とその実践事例を紹介する
イベントはこのほか、2日間、3トラックにわたって航空宇宙・自動車・機械・半導体・素材・公的機関など、さまざまな業種・業態の14の企業・組織が「ものコト」づくりへの取り組み事例を披露した。いずれも「7つのプラットフォーム」を軸に、グローバル化と企業力強化を目指したビジネスプロセス革新を推進する先進的な内容である。また、イベント最終セッションではIBMの取り組みとして、東京基礎研究所の研究開発動向や、同社のリサーチによる自動車産業の将来展望なども披露された。ここではその一部について概略を紹介しておく。
川崎重工業 航空宇宙カンパニー 企画本部(ACE担当) 上級専門職 笹俣 愼吾氏
民需獲得に向けた大規模な業務システム改革の取り組みを披露した。同社では航空宇宙産業ならではの、多品種・少量生産かつ長い製品ライフサイクルを考慮した新たな生産システムを構築。日次の所要量計算の実現や図面ワークフローの改善などで、民需のスピードに対応する仕組みづくりを行っている
三菱自動車工業 グローバル・アフターセールス本部 サービス情報管理部 エキスパート 深谷 俊樹氏
「人が情報を管理するために―RDF/XMLメタデータ生成システムの必要性―」をテーマに、三菱自動車工業が開発・運用している欧州Euro5情報公開要件に対応したシステムを紹介。短期開発や変更容易性が求められた本システムをどのように構築していったかを語り、その実現にメタデータ作成がいかに関与していったのかを説明した
日本産業廃棄物処理振興センター 情報処理センター長 三本木 徹氏
「産業廃棄物の流れをリアルタイムで可視化して、不適正な処理の未然防止など環境政策を推進」を題材に、産業廃棄物処理法の施行とその電子化を支えるシステム構築を紹介。内部リソースが少ない中、SaaSシステムを採用することで運用負荷を軽減しつつ、将来の利用増を見越した、スケールできる仕組みを取り入れているという
キヤノンITソリューションズ 基盤ソリューション本部 基盤開発センター センター長 川島 朝一氏
キヤノンマーケティングジャパングループにおいてITサービス共通基盤の構築を担当しているキヤノンITソリューションズ。講演ではグループ内におけるクラウドインフラ構築について、堅牢かつ拡張性の高いインフラ導入の背景と今後の計画(将来的に自社製・他社製アプリケーションをSaaS型で社内外のユーザーに提供することなど)について語った
デンソーエスアイ ソリューション開発部 新事業開拓 部長 藤本 直氏
「自動認識技術の活用によるものづくり現場のスマート化―現場改善と標準化のご提案―」というタイトルで、デンソーエスアイが実践している業務の効率化や標準化に向けより高いレベルを目指した現場改善事例を紹介。製造業や物流業の命でもある“ものづくり”や“ものはこび”現場をグローバルな視点で進化させることの重要性を語った
旭化成クラレメディカル 経営統括総部 情報システム部 課長 上野 公志氏
売り上げ高海外比率の高い同社が、グローバル経営に適したオペレーションを実現するために実行した取り組みとその成果を示した。すでに海外拠点を多数持つ同社が、「まずは(各拠点の数字を)見えるようにしたい。早く、安価に」をポイントに据え、取り組んでいったデータ統合の道筋を披露。データ分析ツールを駆使し、全世界の動向を日次で把握するシステムを確立しているという
日本IBM 自動車産業ビジネス開発 部長 江崎 智行氏
“Simplify Complexity(複雑さの解消)”と、”Advance Mobility(モビリティーの進化)”を含む5つの緊急課題の重要性を示唆した2008年の調査「自動車業界の将来展望 AUTO2020」。IBMは今年はさらに、自動車業界のCEOを対象とした調査「IBM Global CEO Study 2010」と自動車業界の幹部の皆様を対象とした「Advance Mobility(モビリティーの進化)に関するインタビュー」を行った。講演ではそれら調査で見えてきた世界の自動車業界リーダーからの示唆を紹介。業界における「複雑さの解消」の重要性と「モビリティーの進化」について、さまざまな視点から語られた
日本IBM 理事 東京基礎研究所 所長 森本 典繁氏
「技術の進展は予想よりも早く、人間の脳と同程度といわれる20ペタFLOPSの性能はもう目前に迫っている」。ぼう大な実績データの分析と最適なモデル構築によって実現するシミュレーションを実行するのに十分なコンピュータの処理性能を得られつつあるいま、基礎研究所ではあらゆる事象にかかわる膨大なデータを基にモデリング・検証・シミュレーションするテクノロジーを「エビデンス・サービスクラウド」=シミュレーションエンジニアリングとして提供することを目指した研究が続いている。医療、エンジニアリング領域、都市計画などさまざまな分野で応用可能なものであり、今後、さらなる発展が期待される。併せて、基礎研究所およびIBMが自社だけでなくパートナーとともに開発を行っていくオープン戦略で、研究流域を広めつつあることも紹介された
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