USB 3.0の概要:USB 3.0、スーパースピードを支える技術(1)(1/2 ページ)
高速な次世代インターフェイスとして注目されるUSB 3.0の新連載。第1回はUSB 3.0の最新動向や技術概要、仕様などを紹介
レクロイ・ジャパン
いま、エレクトロニクス業界で最もホットな話題の1つである「USB 3.0」。本連載では、次世代インターフェイスとして期待されているこの高速通信規格の概要から、物理層を中心に技術的な面まで掘り下げて解説していく。(編集部)
これから4回にわたり、USB 3.0の技術的な解説を行いたいと思います。USB 3.0は、さまざまなメディアで紹介されているように、エレクトロニクスの業界では最もホットな話題の1つであります。USB 3.0の概要については、本サイト(@IT MONOist)でもほかのメディアでも以前から紹介されていますので、ここでは若干技術的な面を掘り下げて紹介してみようと考えています。
USB 3.0に関連する最近の動向
最近、秋葉原などの店頭に並んでいるRATOC製のUSB 3.0のホストカードの箱には、USB 3.0のロゴが印刷されており、正式に認証された製品として販売されています。今年1月にUSB Implementers Forum(以下、USB-IF)が発表したリリースの中で示された17の正式認証製品のリストを図1に示しました。この中に、RATOC製のUSB 3.0のホストカードが含まれています。また、HPや富士通のノートパソコンも含まれていますが、目に付くのは富士通を含む4社が、USB 3.0/SATAブリッジ・チップなど外部ハードディスクドライブ関連の製品を主流にしていることです。
以前から「ストレージアプリケーションから普及が進む」としていたUSB-IFの観測を裏付けた形となっています。また、2010年3月2日に発表されたリリースでは、さらに50の製品が追加で正式承認されるなど、いよいよ普及の段階に入ってきたように思えます。
これらの認証製品の認証試験は、USB-IFのSuperpeed USB PIL(Platform Integration Laboratory)において実施されてきましたが、すでに2010年6月まで予約がいっぱいの状況にあり、さらに多くの製品の市場投入が期待されています。より多くの製品の認証を行うために、従来USB 2.0で行われてきたイベントをUSB 3.0向けにした「Certificate Workshop」の第1回が、2010年4月26日から米国オレゴン州ポートランドで開催されることになりました。このことは、USB 3.0の本格普及に向けた重要なマイルストーンの1つとして、多くの注目を集めています。
また、2010年2月に行われたDeveloper's Conferenceにおいて、2010年中にITL(Independent Test Laboratory:外部テスト機関)におけるコンプライアンス試験が実施されると言及されました。一時供給が滞った周辺機器の開発ツールであるPDK(Peripheral Development Kit:図2)もスムーズに供給されているようですし、評価ツールなども含めて、USB-IFによるUSB 3.0普及に向けたサポート体制の整備が進んでいます。
USB 3.0の技術の概要
USB 3.0は、USB 2.0規格と下位互換性を保ち、使い勝手のよさを継承しながらHD画質の動画データも短時間で転送できる高速性を持つインターフェイス規格です。USB 2.0のロースピード、フルスピード、ハイスピードに加え、5Gbits/sの超高速転送が可能になるスーパースピードが追加されています。
一方で、USB 2.0と同じ使い勝手を維持しながら、5Gbits/sの転送速度を実現するにはいくつもの技術的な障害がありました。USB 2.0がそれまでのUSB 1.1と同じ形状のコネクタとケーブルを使用したので、何も意識することもなくUSB 1.1からUSB 2.0への移行ができましたが、USB 3.0で許されている3メートルというケーブル長も、USB 2.0で使われているUTP(Unshielded Twist Pair)ケーブルでは減衰が大き過ぎて正しく通信することができません。その結果、USB 2.0の通信用として同じ規格のUTPはそのままにして、これとは別に5Gbits/sのスーパースピードに対応した通信線を追加しています。
図3では、USB 3.0規格のケーブルの断面を示しましたが、UTPのほかに、SDP(Shielded Differential Pair)が2対追加されていることが分かります。これは、上りと下りの信号をそれぞれ専用の線路を使うことで、同時に通信することができる全二重通信を採用しているためです。つまり、最大の転送レートは、上り、下りそれぞれ5Gbits/sあり、しかも同時に通信可能なので2倍の10Gbits/sになります。
また、USB 2.0ではホストが打診しない限りデバイスは通信の要求を伝えることができませんでしたが、スーパースピードではデバイス側から通信の要求をホストへ適宜伝えることができます。コネクタもそれに伴い工夫が凝らされています。
さまざまなところで目にされているかもしれませんが、図4がUSB 3.0規格のAコネクタです。USB 2.0との互換性を保ちながら、スーパースピードの接続端子を5つ追加しています。このように、USB 3.0は物理的にUSB 2.0と少し変わっていますので、注意すればその違いを認識できます。
USB 3.0の回路ブロック(図5)を見ると、ハードウェア的にもUSB 2.0のブロックとは別個にスーパースピードのブロックを追加しているのが分かります。従って、強引な表現をすると、USB 3.0はUSB 2.0とは違うまったく新しいスーパースピードの回路ブロックをケーブルで束ねて1つに見せているともいえます。回路ブロックも伝送線路もUSB 2.0とは別のものなので、当然、物理層の仕様はUSB 2.0とはまったく異なったものになっています。あまりにも違うので、従来のUSB 2.0の設計を経験された方にとっては理解しづらい面が多々あるのではないかと思います。
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