クラウド? OSS? PLMアプリケーションの新しい選択肢とライセンスモデル:PLM導入プロジェクト、検討前に読むコラム(1) (3/3 ページ)
製品ライフサイクル全体を管理するためにはPLMを基軸としたシステム作りが急務。PLM導入・改善プロジェクトを担当する際に事前に知っておくべき話題を、毎回さまざまな切り口から紹介していきます。
忘れてはいけない共通の検討ポイント
選定に際し両方のビジネスモデルに共通していえることは、システムの評価の際に機能として「何がある」のかではなく、機能を使って「何をする」のかを明確にすることです。
よく、ソフトウェアの選択時に各ソフトウェアの機能を比較していますが、多くの場合、この比較表は意味がありません。
なぜならライセンス販売されているシステムの場合は自分たちが実際に触って比較することができていませんし、たとえ無償で入手できても、それぞれのソフトウェアを使いこなさないと十分な比較ができないからです。
そのため、ソフトウェアベンダに比較表を作ってもらうのですが、このときに提出される比較表はそれぞれ粒度がまったく異なるため、あまり意味を持ちません。ちょうど長さを比較するのにメートル法とヤード法で比較しているのと同じようなものです。
プロトタイプ作成の勧め
結局のところ、一番良いシステムの選択方法はまず使ってみることです。
今日ではオープンソースモデルはもちろんのこと、クラウドサービスでも一定の無料評価期間を設けています。もちろんライセンス販売されているものでも、一定期間無償で評価させてもらえるものもあります。
これらを使って自分自身の手でプロトタイプを作成することをお勧めします。
ソフトウェアにはそれぞれ個性があるので、オペレーションなどはシステムによって異なります。
しかし、ソフトウェアには業務モデルをテンプレート化して実装されているため、自分たちが実現したい業務モデルが明確になっていれば、ソフトウェアの操作に関する個体差はそれほど問題にはなりません。
システムの使い方がイメージできない場合は、それを使った業務の実現イメージがまだ固まっていないことが多いため、一度冷静になることが必要です。
もちろんライセンス販売されているシステムを否定するわけではありません。
しかし、昨今の厳しい経済状況をかんがみても、システム構築時のリスクをできるだけ減らすことを考えなければいけません。
Linked Inなどを見ても今回のようなテーマが活発に議論されていますし、欧米各国の人たちはこのような新しいビジネスモデルでも積極的に採用し、いかに自社の競争力アップに役に立つかをトライしています。
“Free”のビジネスモデル「フリーミアム」って?
最近ではフリーから収益を上げ企業活動につなげているビジネスモデルがフリーミアムと呼ばれ始めています。
フリーミアムの言葉の意味は、フリー(Free)とプレミアム(Premium)を併せた造語で、フリー(無料)で提供されるものと、プレミアム(有償)のものをうまく融合して収益を成り立たせているビジネスモデルです。
昔は無料で手に入るものは多くの場合、有料のものより劣っていました。
しかし、ソフトウェアなどは再生産のためのコストが実質ゼロにすることができるため、今日では無料で提供されるソフトウェアが必ずしも有料のものより機能が劣っているとはいえなくなってきました。
フリーミアムという言葉はベンチャーキャピタリストのフレッド・ウイルソン氏の造語ですが、昨年末、日本でもクリス・アンダーソン氏の『フリー』という書籍が出版され瞬く間にベストセラーとなりました。
クリス・アンダーソン氏はあの「ロングテール」という言葉を世に広めた人でもあります。フリーミアムビジネスモデルは製品の再生産コストが限りなくゼロに近くなるビジネスモデルを確立した企業がサービスを提供しています。
このようなビジネスモデルをうまく活用することで、コストを抑えつつプロジェクト成功の確率を高めていくことも可能です。
ライセンスソフトウェア、クラウドサービスおよびオープンソースソフトウェア、どれを選ぶかはそのときの状況で異なります。
しかし、フリーミアムビジネスモデルを有効活用し、無料のサービスでリスクをヘッジして、有料のサービスで成功の確率を上げていくことが、60%といわれるエンタープライズシステムのシステム化成功率を上げていく1つの手段であることは間違いありません。
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