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常連校の芝浦工大、またスタートラインに戻って第7回 全日本学生フォーミュラ大会 レポート(番外編)(2/2 ページ)

第7回大会を辞退した出場常連校の芝浦工大。チーム解散の危機にまで陥るが、生き残ったメンバーで再起を決意!

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チーム解散の危機

 いっそ、チームを解散しようかという話も出た。チームを去っていくメンバーもいた。

 しかし、もしSHIBA-4がなくなってしまったら、もう自分たちの手で車両を作るという貴重な経験は二度とできなくなってしまう。車両を自分たちの手で作ってみたいという先輩たちの強い思いから始まったこのプロジェクトをつぶしてしまってもいいのか?

 それだけは、何としても避けたい! ――その思いを胸に、生き残ったチームメンバーたちは、再起を図ることを決意する。

 永井さんたち3年生は今年の反省点の洗い出し、早川さんたち2年生はこれからの体制について、というふうに分担し、話し合いを続けながら新しいチーム体制を整えた。主には、リーダーたちを圧迫していた事務作業をみんなで行おうということになったという。事務仕事を含めての車両作りだということをあらためて確認させられた。

 また従来の芝浦工大は、他校との交流が控えめだった。それを今期からはもう少し積極的にしていこうということになった。東京農工大学や日本工業大学に訪問し、お互い励まし合い、チーム運営のヒントももらうことができたという。

 それから、とにかく話し合いの数を増やしていった。「僕たち2年生の多くが同じ学科の生徒で、1人暮らしをしている人も多いです。そんな事情もあって、僕の代のメンバーでは連絡をまめに取り合ったり、夜遅くまで話し合ったりしています」(早川さん)。密なコミュニケーションについては、いまのところ、早川さんたちの環境が後押しをしている部分もあるが、この考え方は今後、大宮校舎に移ることがあっても忘れないでいきたいとのこと。過去、強みにしてきた大学院生たちのパワーに頼ることなく、素晴らしい車両を作っていく決意をした。

 工作の腕前がよくても、クルマ作りに関する豊富な知識があっても、素晴らしい車両は完成しない。全日本 学生フォーミュラは、「モノづくり総合力のコンペティション」だとしている。その「総合力」を高めていく難しさを芝浦工大チームは身をもって体験した。

これからのSHIBA-4

 来年の第8回大会で芝浦工大チームは、今年の第7回大会で走らせる予定だった車両「S006」を基にして開発したS007で参戦する予定だ。開発コンセプトもS006と同様で、「ドライバビリティーの向上」だ。「S006では、手動のシフトを電動パドルシフトに変えましたが、これも継承していきます」と大学3年生の前川 彰秀さんはいう。


ハンドルの裏にある電動パドルシフト

芝浦工業大学 前川 彰秀さん サスペンション担当

 前川さんは、サスペンションも担当兼ドライバー。自分自身で乗り心地を体験しながら、サスペンションを設計できるという、ちょっとおいしい!? 役だ。彼は、来年度は4年生になるものの大会に参加する。

 S006からの設計変更は、問題のある部分や新しいレギュレーションに対応するための部分にとどめ、高い信頼性を重視して望むとのことだ。大会経験出場のないメンバーが多い状況で大会に出場し、大きな問題を起こさずに全競技に参加すること。――それは、海外大会でも健闘した常連校らしからぬ目標ともいえるかもしれない。しかし、いまは無理をせず、スタートラインに戻って、着実に前へ進むことが一番大事なときだ。

 第7回大会から大きく変わったレギュレーションについては、大会に出られなかった分の時間で、しっかり研究でき、準備万端だという。これは不幸中の幸いともいえる。

 「燃費についても改正(「燃費」の配点アップ)がありましたよね。当校の車両は、過去の大会では、すごくたくさんの燃料を使うようにしてきたんです。今年はそれをあきらめて、パーツの性能を上げていこうと設計しました。その一部として、サスペンションのハブの部品を軽量化しました」(前川さん)。

 フレームの設計については少々苦労したと永井さん(フレーム担当)はいう。「(レギュレーションの改正により)フロント部を大きくしなければならなくなりました。いままで小さく小さくと設計を追い込んでいたところ、逆に大きく大きくとしていかなればいけなくなり、設計がきつかったですね」。


S007の車体 整備中のためカウルは付いていない

 3年生の前川さんと永井さんは、アメリカ大会の出場経験がある。そのとき、彼らがファンになったのは、サウスダコタ大学(South Dakota State University)。カウルが非常に美しく、強く印象に残ったという。芝浦工大チームが、再びサウスダコタ大の車両を間近で見る日が、近いうちに訪れることを願う。


サウスダコタ大学のフォーミュラカー

 「本当に底の底から再出発です。先輩たちが残してくれた栄冠を取り戻せるよう、満足できるようないい成績を残せるよう、チーム作りに頑張ります!」(早川さん)。

 新しい風を吹かして、頑張れ、新生・SHIBA-4! 来年は大会会場でお会いしましょう!



 今年の全日本 学生フォーミュラ大会の特集はいかがでしたか? 来年も、MONOistでは本大会を元気に取材していきます。さて来年はどんな大会になるでしょうか。どんな車両が現われるでしょうか。来年もお楽しみに!(終わり)

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