幾何公差の大基本は寸法基準の見極めだ:製図を極める! 幾何公差徹底攻略(1)(2/2 ページ)
まずは寸法記入の基準を見極める方法を確認しよう。効果的な幾何公差記入をするために大事な知識、あなたはちゃんと理解している?
基準となる面や線とは
JISの一般原則(寸法記入方法)に『寸法は必要に応じて基準とする点、線または面を基にして記入する』と示されています。図3の2次元組立図から基準となる部位を探してみましょう。
基準を探す際に、一般的に次の2点でアプローチします。
- その部品は、どのように拘束、つまりどこに押し付けられて固定されるのか?
その部品がどう拘束されているのかが分かれば、その拘束部分が基準といえます。 - その部品は、何をするために存在するのか?
意味なく部品が取り付けられているわけではありません。何か機能を果たすために存在します。また機能を果たすための面や線があり、そこが基準となります。
ブロックをベース板に取り付ける基準
このブロックをベースに取り付ける手順を考えます(図4)。
- A面をベースに押し当てます
- B面をダボに押し当て位置を決めます
- 上記では、図面奥行き方向の位置決めができていないため、Cのネジでブロックを完全拘束します
ブロックが機能する基準
このブロックはロータリーダンパーの一部を固定しています。固定する手順を以下のように考えます。
- ロータリーダンパーの一部をD面に押し当てます
- ロータリーダンパーの一部をE面に押し当てます
- 上記では、図面手前と奥方向の位置決めができていないため、Fのネジで当て板を介してブロックを完全拘束します
図4と図5から、このブロックの基準となる面や線が見つかりました。
この基準となる面や線から寸法が引かれていきます。図4と図5からでは、基準とすべき面や線は少ないように感じますが、その基準面と基準線に関係する寸法線を赤く表示すると以下の図6のようになり、半分以上のウェイトを占めていることが分かります。
さらにブロックの寸法(寸法公差)や形状(幾何公差)のばらつきを小さくすることで精度を向上させる場合は、必要に応じて赤く表示した寸法に、寸法公差を追加、さらには幾何公差を追加すればよいのです。
寸法記入にはプライオリティ(優先度)があります。機能上重要な部分を優先し、必要に応じて寸法公差や幾何公差を指示します。しかし加工現場からのフィードバックとして、加工に合わせた寸法記入が必要な場合もあります。製品の品質・信頼性を保証するのは設計者の責任ですから、関連部門と協議の上、機能性、加工性、計測性のトレードオフ(一方を満足させれば、他方が不満足になること)を考慮して、寸法を記入してください。
次回は、幾何公差を使用するに当たり最低限必要な知識として、旋盤加工・フライス加工、そして計測機器について解説します。(次回に続く)
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